話題・その他

キャッシュレス、ポイント還元の浸透遠く…導入に悩む店舗の思いは

 10月1日の消費税増税に合わせて導入されるキャッシュレス決済に伴う「ポイント還元制度」が浸透していない。対象となる全国約200万店の中小企業のうち、同日からの参加を決めたのは4分の1程度。8%に据え置く「軽減税率」が適用される商品があるほか、店舗規模や商品の種類によって実質税率が異なるといった複雑さも一因とみられる。顧客の多くが現金派で不要と考える店もあり、今後の広がりは未知数だ。(桑村朋、吉国在、土屋宏剛)

 「目に見えない金でのやり取りは気が進まない。現金の方が信用できる」

 大阪・ミナミの心斎橋筋商店街で糸販売店を営む男性(83)は約40年間、現金だけで決済してきた。周囲は訪日外国人客も多い一大観光地。訪日客からクレジットカードの使用可否を聞かれることも多くなった。

 「(キャッシュレス社会に)適応できなければ店をたたむしかないのかも」。一方、新しい税制は自分なりに勉強した。「導入を決めた店主にも理解できていない人は多いはず。彼らが損をしないよう、詳しく周知すべきだ」と語る。

 キャッシュレス決済のポイント還元制度は経済産業省が推進。増税後の「買い控え」対策で、クレジットカードや電子マネーで支払うと金額の原則5%をポイントで還元するものだ。政府には将来的にキャッシュレス決済比率を80%に引き上げる目標があり、増税は普及を図る好機でもある。

 実施は来年6月までだが、経産省によると、全国約200万の対象店舗のうち、10月1日から参加するのは約50万店にとどまる。また、実質の還元率も計5通りと複雑で、店員らに混乱を招くとの懸念もある。

 こうした中、還元対象となる店舗の多い商店街がキャッシュレス化に舵を切るケースも。大阪市住之江区の粉浜商店街は、8月からキャッシュレス決済サービス「ペイペイ」の運営会社を呼び、説明会を開いて導入への理解を促してきた。

 「5%のポイント還元がないからと、客が離れるのを避けたかった」と話すのは同商店街振興組合の富永高文理事長(59)。全体の約3割が既に導入、残りも前向きだが、精肉店を営む松岡伸六さん(54)は「店員はスマホを持ったこともない年寄りばかり。客に迷惑をかけては元も子もない」と二の足を踏む。

 経産省は、参加店やポイント還元率を地図で検索できるスマホ向けアプリを配信するなど、周知に躍起だが、なかなか広まらない。

 日本キャッシュレス化協会代表理事を務める東洋大の川野祐司教授は「還元制度は消費者にメリットはあるが、店舗側にはほとんどない。この制度だけで浸透を図るのは難しい」と指摘する。キャッシュレス化には導入コストや維持費がかさむほか、帳簿の変更など手間がかかることも敬遠される一因とした上で、「今後、政府には店側の視点に立ち、導入コストをゼロにしたり手間を軽減したりする細かい支援が必要だ」と話した。