キズナアイ、東京モーターショーでPR大使に

 
元祖「Vチューバー」のキズナアイ(Kizuna Ai提供)

 10月下旬開幕の東京モーターショーで、人の動きを連動させたキャラクターでインターネット動画を配信するバーチャルユーチューバー(Vチューバー)が、PR役の「アンバサダー(大使)」に就くことになった。入場者減に悩むショーは今回、自動車にとどまらない「未来生活」を見せる場への大転換により入場者100万人への回復が目標。主催の日本自動車工業会(自工会)は、PR面でも日本発の未来を感じさせる手法で、従来と全く異なる層へ発信する狙いだ。

 アンバサダーに起用されるのはVチューバーの「キズナアイ」。平成28年に世界初のVチューバーとして誕生し、動画チャンネル登録者数が計400万人を超えて海外にも多くのファンを持つ。Vチューバーは、配信する人の動きや表情などを連動させて動くコンピューターグラフィックス(CG)のキャラクターで、最近はCMにも登場している。

 車の産業見本市であるモーターショーは、インターネットの普及で情報収集手段が増えたことや、車自体の存在感の低下などから、各国で入場者が減少。東京も平成3年の201万人のピークから2年前の前回は77万1千人に減った。

 所有からシェア(共有)という利用形態の変化、他業種も加わった先進技術によるモビリティー(移動)の未来像模索など業界環境も激変する中、豊田章男自工会会長は「車に限らず、みんながわくわくする『未来の生活』を見せる場へとかじを切る」と宣言し、電機や通信など異業種と連携。100万人の大台という意欲的な目標を掲げ、スポーツの遠隔観戦など近未来生活が体験できるゾーン、レーシングゲームの腕前を競う「eモータースポーツ」世界大会などデジタルとの融合も進める計画だ。

 キズナアイの起用はこうした取り組みの一環。大使として単にショーの紹介だけでなく、未来のモビリティーに関する話題に動画チャンネルで触れてもらうほか、会場では大型スクリーンで入場者を迎えたり、登壇者とトークショーをしたりしてもらう考えだ。自工会関係者は「自由で新たな発想で、従来の車利用者以外にも魅力を伝えてもらいたい」と期待を寄せる。

 東京モーターショーは10月24日~11月4日、東京ビッグサイト(東京都江東区)周辺で開かれる。

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 バーチャルユーチューバー 動画配信者が自らに連動させて動かすデジタルキャラクターやその手法。人の動作や表情を正確に認識する「モーションキャプチャー」などの技術の普及で実現した。動画配信から始まったが、キズナアイのように音楽やCMといったタレント活動も広がっている。初音ミクなど「バーチャルシンガー」がプログラムで操作される“人形”なのに対し、Vチューバーは「中の人」が自ら演じる“着ぐるみ”のような存在。(今村義丈)