登録調査機関15周年 高齢技術者、再活躍の場に
特許庁の登録調査機関制度が1日、施行15周年を迎えた。同機関は、審査官のために特許権付与の検討資料を探す「先行技術文献調査」業務などを受託する民間調査機関で、現在9機関ある。そこで働く調査業務実施者は現在全国に約2650人。その多くは企業出身の高齢技術者で、企業退職後、特許審査迅速化と日本発イノベーション促進のため活躍している。
最高齢者は83歳。「審査官も研修や企業訪問を通じ、高度化する技術の流れに追い付く努力をしているが、調査報告を受ける際に専門的技術について細かく、直接聞けることは、とてもありがたい」と話すのは、同制度を担当する審査推進室の黒嶋慶子室長補佐だ。
最大手の工業所有権協力センターの職員の平均年齢は62.8歳、60歳以上75歳までが72.8%だが、前職が役員・本部長・工場長などの層が4.7%、部長・室長・技師長クラスが33.5%を占めている。企業で培った高度な知見を終身、活用できる職場といえそうだ。
ただし、優秀な技術者であればよいというわけではない。特許成立の基本となる新規性、進歩性などに関する深い理解が不可欠となるため、調査業務実施者となるには法定の育成研修を受けて筆記試験と口頭試問にパスする必要がある。約1割が毎年退職するため、登録調査機関では適性人材の確保、育成に常に努めているという。
人財獲得は業務受注につながる。審査推進室では調査業務実施者の仕事ぶりを4段階で評価し、受注入札の際の参考にしている。また登録調査機関でも能力向上策を進めている。特許庁に加えて民間の調査業務も受託できる特定登録調査機関の資格を持つ技術トランスファーサービスの秋山敦社長は「独自の研修教材を作成中だ。先行技術を見つけるだけでなく、審査官へ提案や民間企業へ説明ができる人材を育てたい」と話す。特に知財の専門家がいない中小企業の場合、正確な調査報告だけでなく、特許性などの説明が必要になる。
同制度の課題について、嶋野邦彦特許技監は中国特許はじめ外国語文献調査の増加に伴う調査業務実施者の負担増を指摘する。「機械翻訳ツールの機能向上に加え、今後はより効率的に検索するためのサポートを考えていきたい」と語る。働き方が問われる時代にあって高齢者の多い職場である上に、何よりも知財創造を支える現場であるからだ。(知財情報&戦略システム 中岡浩)