【マネジメント新時代】「86人に1人」に増加、発達障害の人と向き合う組織を

 
「気候行動サミット」で環境問題への対応を訴えるグレタ・トゥンベリさん=9月23日、ニューヨーク(AP)

 スウェーデン生まれの16歳の女性活動家、グレタ・トゥンベリさんが9月23日、国連本部の「気候行動サミット」の会場で行った地球温暖化についての演説が大きな反響を呼んでいる。それ以上に驚かされたのが、この女性は自分がアスペルガー症候群であることを公表していることである。アスペルガー症候群は発達障害の一つといわれており、近年大人のみならず子供にも急速に拡大している障害の一つである。こうした障害を持つ人と会社などの組織との関わりを考えてみたい。(日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎)

 「86人に1人」に増加

 障害者は、一般的に身体障害者、知的障害者、それに精神障害者に分類される。そのうち、身体障害者は、交通事故などで手や足が不自由になった方であり、外観的な特徴で分かる。また不自由な部分が、最近の新技術により他で代用できれば、仕事上では問題は少ない。車椅子の方であれば、スロープを設けることであろうか。パラリンピックも開催されており、健常者と何ら変わらない動きができる。知的障害者は、知能面で問題があり、複雑な仕事が理解しにくい方である。仕事でいえば、清掃など簡単な仕事を行うことが多い。

 一方、最近増えているのが、外観上は普通の人と全く変わらないが、言語、コミュニケーション、社会性などの発達で何か精神的な支障がある人である。これらを発達障害と呼び、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如/多動性障害)、LD(学習障害)に分類される。その中でも、ASDは自閉症、アスペルガー症候群と呼ばれ、次のような特性を持つ人といわれている。

(1)人との関わり方が苦手(社会的なやり取りができない)

(2)コミュニケーションに障害(言葉に遅れがあったり、話を理解できない)

(3)想像力が乏しく、強いこだわりがある(言われたことだけを行う、自分だけのルールにこだわる)

 発達障害に詳しい宮尾益知先生著書「発達障害の人が働くときに知っておきたい10の基本」によれば、以前は5000人に1人の割合であったものが、2000年には86人に1人の割合まで増加しており、最近ますます増えているとのこと。また文部科学省が公表した12年の調査では、通常の学級に在籍している子供の中で、発達障害とみられる子供は100人中で6.5人、つまり15人に1人の割合にまで増えているようだ。子供まで急拡大していることに驚かされる。

 革新的才能の持ち主

 さらに、大人の場合、発達障害者の比率が高いのが、IT企業や研究所の人といわれている。毎日、コンピューターでプログラミングや解析と向き合うことで、空気が読めない、人とのコミュニケーションが苦手となっていくのかもしれない。またそのような企業では、幹部にも多数存在するようだ。

 一方、発達障害の方はネガティブな要素だけでなく、他とは異なる世の中にないものを創り上げていく能力も備わっていることがあるようだ。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ両氏も発達障害であったことを明かしている。さらに、最近注目されているのは、発達障害者の中に「ギフテッド(ある優れた才能を持って生まれた人)」と呼ばれる人が存在し、革新的なことを生み出す可能性があるとのこと。

 これまでわれわれは「空気を読む」など、社会性、協調性などを重視してきた。しかし、大人さらには子供までも発達障害者が増えていることを考えると、外観は普通であるけれど、「少し変わった人」に対して、気づいてあげること。また少し変わった人で終わらせるのではなく、病院にて診断し、発達障害かどうかを見極めてあげることも大切のように思える。

 上述のグレタ・トゥンベリさんは、「アスペルガーは病気ではなく、一つの才能。アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう」と言っている。自らの症状を意識して周囲に告げることで、周りもそれに配慮していく、そのような多様化した社会が望まれているのであろう。

 発達障害者など多様な才能を持つ人々と普通の人々を、どのようにしてまとめ上げ、リーダーシップを発揮していくのか、新しいマネジメントのあり方が求められていると思える。

【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。63歳。福井県出身。