日本が異色? 低迷ゴルフ場、欧米豪の富裕層“開拓”に求められる柔軟性

 
「みえゴルフツーリズム推進機構」のモニターツアーに参加したイギリスのゴルフコンサルタント、サラ・フォレストさん。渋野日向子選手について「日本人ゴルファーの存在を知らしめるのにすごく強い影響を与えた」と称賛した =9月18日午後、三重県津市のエクセレントゴルフクラブ伊勢大鷲コース(上野嘉之撮影)
「みえゴルフツーリズム推進機構」のモニターツアーに参加したアイルランド人のキエロン・カシエルさん。日本のゴルフ場は「おもてなしや行き届いた施設も魅力」と語った =9月18日午後、三重県津市のエクセレントゴルフクラブ伊勢大鷲コース(上野嘉之撮影)

 ゴルフ人口が大幅に減少してゴルフ場経営の苦境が続く中、インバウンド(訪日外国人客)を開拓して盛り返そうと、「訪日ゴルフツーリズム」の取り組みが広がってきた。三重県は昨年秋に国際的なゴルフ旅行商談会を初開催し、今月には外国人ゴルファーを招いたモニターツアーを実施。北海道のゴルフ場も、9年前からインバウンド誘致に本格的に取り組んでいる。ゴルフは2020年東京五輪で正式種目になるほか、今年8月の全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝するなど注目も高まっており、国際展開のチャンスを迎えている。(田村慶子)

国際商談会を初開催

 三重県では昨年10月、海外24カ国・地域から52の旅行会社などを集めた商談会「日本ゴルフツーリズムコンベンション」が初開催された。また今年4月、県やゴルフ業界による「一般社団法人みえゴルフツーリズム推進機構」が発足。訪日客を呼び込もうと、英語での情報発信や、訪日客受け入れ環境の検証・整備などを進めている。

 9月18~24日には、観光庁の「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」として、外国人を招いたモニターツアーを津カントリー倶楽部(津市)などで開催した。このツアーには、日本のゴルフ情報を英語サイトで発信している東京在住のアイルランド人男性、キエロン・カシエルさんも参加。「日本のゴルフ文化は、昼食を一緒に食べて午後のラウンドを回ったり、プレー後に風呂に入ったりとユニーク。おもてなし、行き届いた施設も魅力です」と語った。

 三重県でインバウンド誘致を牽引する日本ゴルフツーリズム推進協会の小島伸浩副会長(津カントリー倶楽部副社長)は、誘致のターゲットをゴルフ文化の伝統があるヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの富裕層だと明かす。

 「訪日ゴルファーの人数は台湾、韓国、中国が多いが、ゴルフのトレンドやゴルフ文化はやはり欧米豪から生まれる。それらの国から目の肥えた富裕層のゴルファーを連れてきて、発信してもらうことで、ブランド価値を高めるマーケティングをしていく」と小島氏は狙いを語る。そのため、高級料理や上質な地域観光などと組み合わせたツアーを提案している。

北海道は外国人4倍増

 リゾート型ゴルフ場が多い北海道も、訪日ゴルファー誘致に意欲的だ。平成22年4月、ゴルフ場や用品販売会社が「北海道ゴルフ観光協会」を発足。同協会は世界のゴルフ旅行関連企業が名を連ねる「国際ゴルフツアーオペレーター協会(IAGTO)」に加盟し、スペインでの国際ゴルフ旅行博に出展するなど地道な活動を続けている。

 そのおかげで、道内ゴルフ場の外国人利用者数は22年当時の1万人弱から、昨年は4万人強まで増えた。

 スポーツを核とする観光誘致「スポーツツーリズム」は、観光庁やスポーツ庁が力を入れてきた。競技やレジャーに自ら参加するだけでなく、観戦したり、開催地周辺を観光したりと、幅広い客層や長期滞在を見込めるからだ。

 特にゴルフは、来年の東京五輪や、2021(令和3)年に大阪で開かれる「ワールドマスターズゲームス」の競技種目にもなり、海外ゴルファーを集める好機と期待されている。

国内ゴルフ人口半減

 国内のゴルフ市場は、若者の減少やゴルフ離れ、既存ゴルファーの高齢化などから20年以上にわたって縮小し続けてきた。ゴルフ人口は平成6年の1370万人をピークに、昨年は670万人とほぼ半減した。

 それでもなお、日本は世界第3位の“ゴルフ大国”だ。

 英国の調査レポート「Golf Around the World2019」によると、昨年時点のゴルフ場最多国は米国で1万4640軒、カナダの2265軒に次ぎ、日本は2227軒となっている。

 ただ、世界における日本のゴルフ場の認知度は極めて低い。業界関係者は「外国人は日本でゴルフができるとさえ思っていない」と口をそろえる。

 簡単に言えば、日本のゴルフ場の多くが訪日客を迎える環境にないといえる。全国共通の課題は、多言言語対応だ。コースや併設施設、スタッフ、公式ウェブサイトが英語に対応している例はほとんどない。海外では「気軽に予約できない」といった声が上がる。

 日本のゴルフ場の多くは会員制クラブで、ビジターが予約出来ないケースもある。インバウンド誘致が盛んなタイなど東南アジアのゴルフ新興国は、ほとんどのゴルフ場を誰でも利用できる。北海道ゴルフ観光協会の高橋成司会長は「(タイなどは)プロモーションやインバウンドへの柔軟な対応などが進み、日本は比較の対象にもならない」と危機感を募らせる。

むしろ日本が異色

 ハワイやグアム、タイなどのゴルフコースを1年に50回以上回るという大阪市の会社員、岩本義之さん(51)は、「海外のゴルフ場は服装の制限も緩く、車の送迎もあるからアルコールも楽しめる」と利点を語る。日本では休憩を挟まず18ホールを回るスループレーができるゴルフ場が少なく、岩本さんは「効率が悪いと思う外国人もいるのでは」と指摘する。

 一方、訪日ゴルファーは国内ゴルファーとルールやマナーの意識が異なり、トラブルになるケースもあるという。多くの国内ゴルフ場がインバウンド対応に及び腰なのは、ゴルフクラブの会員を守るという意図もあるようだ。とはいえ、縮小が続く国内ゴルファーに依存した“一本足打法”では立ちゆかないゴルフ場も出るだろう。

 マナーやゴルフ文化の相違について、小島氏は「受け入れ体制というより、受け入れ方の意識の問題。相手がどういうゴルファーか理解して、その人に合ったプランを提供すれば、マナーの問題はほとんどなくなる」と指摘する。また高橋氏は「プレー習慣が異色なのはむしろ日本。世界標準に合わせて意識改革しなければならない」とも呼びかけている。