10年で売り上げ5倍に ニッチな下着販売、活況の舞台裏

 
棚に並んだ箱にバーコードを印字し、在庫管理などをしている「すててこ」の倉庫=福井県あわら市
下着専門のネット通販「すててこ」の本社=福井県あわら市
下着専門のネット販売に舵を切り、すててこを急成長させた笹原博之社長=福井県あわら市
すててこの所在地

 福井県あわら市の「すててこ」は下着専門のインターネット通販会社。アパレルのネット通販は多いが、下着に特化してニッチ(隙間)をねらい売り上げを10年で5倍に急拡大させた。秘密は3代目社長の実店舗からの大胆な転身にあった。

 本社は大きな倉庫

 あわら市の住宅街の一画にある本社は、入り口に学生服などを扱う販売カウンターを置くが、裏に回れば商品保管の大きな倉庫だ。3代目の笹原博之社長(47)が平成26年、「大手チェーンとの競争に勝てない」と見切りをつけ、倉庫に改装した。

 同社の品ぞろえは6千点に上り、200以上のカテゴリーに分けて販売する。自社サイトのほか、ヤフー、楽天、アマゾンなどの主要ショッピングサイトに支店を持ち、29年の年商は5億円。ネット通販を本格化する前の約10年前と比べると約5倍にもなった。

 ネット通販の市場規模は右肩上がりを続け、昨年は9兆円を突破。そこに商機をつかんだ笹原社長だが、「ネット通販をしないと食べられなかったのが実情だった」と振り返る。

 下着に目を付けた理由

 戦後、祖父が反物行商から衣料品店を立ち上げ、父の代で県内同業者とともにチェーン展開。ショッピングセンター(SC)に進出し、大型化を進めた。

 だが、バブル崩壊後の不況で経営が悪化。大阪のアパレル会社に勤めていた笹原社長が平成8年に家業に戻ると、残っていたのはSC内の1店舗だけ。「1千万円の赤字で、いつ破産してもおかしくなかった」

 そこで笹原社長はSCから退店し、13年、地域の衣料品店として出直しを図った。20年には3千万円を投資し、ブランド品を扱うセレクトショップに改装。だが、うまくいかなかった。

 その失敗をリカバーし、反転攻勢できたのがネット通販だった。チラシの自作のためパソコン操作を覚えたのをきっかけに、12年から開始。「下着ならメーカーのカタログもあり、自分で商品写真を撮って加工する必要がなかった」と取扱商品に下着を選んだ。下着は服の中に着るため通常の衣類より返品率が低いことも、確実な収益につながった。

 投資を惜しまず成長

 ネットへ注力するなか、成長のための投資を惜しまなかった。

 本社に所狭しと並ぶ箱には番号とバーコードが付けられている。POS(販売時点管理)と同様の管理システムだ。もともとバーコードのない商品には自分たちで添付する手間が生じるが、システムの導入で商品探しを円滑化し、繁忙期に人員を増やす必要がなく省力化につながった。

 一方、23年にはサイト上の支店を一括管理できるシステムを導入し、28年からは新商品の登録作業にはネットを通じた外注サービスを活用。こうした積極的なITサービスの導入が評価され、今年、経済産業省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」にも選定されている。

 今年10月には新たな倉庫の増設とともに、管理システムを最新に更新した。バーコードを読み取る端末に注文一覧を表示させ、注文リストの特殊な印刷紙を使わずにコストを抑える。

 笹原社長は「年商100億円が目標。今のビジネスだけでは難しいが、これからのイノベーション(技術革新)を準備している」と夢を大きく掲げる。