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ミニストップ、「おにぎり100円」がもたらした“意外な変化”

 「おにぎり毎日100円!」--7月に始めた施策が話題になったミニストップ。7月2日から全国約2000店舗で、主力商品のおにぎりの本体価格を100円に統一した。「手巻紅しゃけ」「手巻ネギトロ」など、旧価格が130円だった商品は、1個で30円もの値引きになる。原材料価格が高騰する中で、思い切った策だ。

 値下げから3カ月たち、「おにぎり100円」施策の効果は出ているのだろうか。そして、“100円”という値決めは成功しているのか。同社に施策の狙いや現状について聞いた。

 ファストフード以外の「柱」が必要に

 ミニストップの足元の業績は厳しい。2019年2月期の連結売上高は前期比0.8%減の2053億円、営業損益は5億5000万円の赤字だった。今期は不採算店舗の閉店も進めており、業績の立て直しが急務となっている。

 ミニストップといえば、ソフトクリームや「ハロハロ」などのファストフードに独自性や強みがある。長らくその“看板”を前面に立ててきたが、これまでよりも客数を増やすために、他にも大きな柱となる商品や施策が求められている。

 「PI値(レジ通過客1000人当たりの購買指数)を見ると、おにぎりは飲料やたばこに次ぐ数値。かなり上の方になる。おにぎりをどう伸ばすか、ということは重要な課題」と、商品本部デリカテッセン商品部部長の竹内英雄氏は説明する。これまでも、おにぎり5商品を対象に、1個100円で販売するセールを年に数回実施してきた。このセールが毎回好評であることも、おにぎりの施策強化の理由だという。

 では、なぜ5商品を100円で販売するセールを続けるのではなく、全商品の通常価格を100円に引き下げたのか。竹内氏は「(期間限定ではなく)継続した取り組みが必要だった。そして、おにぎり全体を対象にした方がお客さまに響くと考えた」と話す。実際、4月に青森県内で「100円おにぎり」を先行販売したところ、5品セールよりも高い効果が出たという。その結果をもとに、全国展開に踏み切った。

 しかし、いくら客数に効果があるとはいえ、原材料費も上がっている。大きく値下げするためにはコストを見直すことも避けられない。

 「100円でも品質は下げない」(竹内氏)ために、手を付けたのが「商品数」だ。以前は、各地域の工場で25~26種類のおにぎりを製造していたが、その数を15種類に絞った。製造するおにぎりの種類が変われば、製造ラインの部品などを入れ替える作業が発生する。そのロスを削減することで、「同じアイテムを1.5~2倍作り続けることができるようになった」(同)。品数は減ったものの、製造効率が向上した。

 販売個数は2倍に 売れ筋には大きな変化

 では、実際に「おにぎり100円」にはどのくらい効果があったのか。7~8月の2カ月間で、おにぎりの販売個数は前年同期比2倍に増加。「9月はさらに好調に推移した」(竹内氏)という。おにぎりの最需要期である8月に合わせて施策を開始したことも追い風になった。大幅な値下げになった商品もあるものの、1店舗あたりのおにぎりの売り上げは50~60%増えたという。

 また、おにぎりと一緒に買う商品点数も増加傾向にある。例えば、以前は「おにぎり+サラダ」だったのが、「おにぎり+サラダ+ファストフード」に増える、といったイメージだ。調理麺や総菜などと一緒に購入するケースも多い。そのため、「おにぎりをキー(メイン)として買い物をする人の単価は伸びている」(竹内氏)

 一方で、販売数が落ちた商品もある。おにぎり2~3個がパックになった商品だ。おにぎり単品を100円で買えるため、お得感が少ないと思われているのかもしれない。手巻きずしやサンドイッチも「想定内だったが、影響を受けた」(同)。その一方で、店内調理の「手作りおにぎり」(160~170円程度)の販売にはほとんど影響がなかったという。

 そして、今回の施策は、おにぎりの「売れ筋」も一変させた。

 これまでのおにぎりの売れ筋は、不動の1位が「ツナマヨネーズ」だった。その次に「紅しゃけ」「昆布」「梅」が続いていた。それが「おにぎり100円」開始後は大きく変わった。1位が「紅しゃけ」になり、次に「ネギトロ」、その後に「辛子明太子」「ツナマヨネーズ」と続く。

 なぜ売れ筋商品が一変したのか。その要因は、商品の“旧価格”だ。紅しゃけ、ネギトロ、辛子明太子は値下げ前の本体価格が130円だった。一方、ツナマヨネーズは107円。昆布と梅はそれぞれ102円、116円だった。つまり、値下げ幅が大きく、お得感のある商品を選んで購入する人が多いようだ。

 「1個100円」で拡大した、意外な需要

 加えて、一部店舗には「想定外の効果」も出ている。地域の祭りなど、催事で配るためのおにぎりとして、“特注”が増えているという。なぜかというと、「1個100円」という分かりやすい価格だからだ。どの種類でも同じ価格であるため、複数の種類のおにぎりを大量に注文しても、事前に計算がしやすい。コストも抑えられる。「意外な需要があった」(竹内氏)ことから、おにぎりを予約できることをPRするチラシを急きょ作った店舗もあるという。

 加盟店からは、「客数が目に見えて増えた」「家の近くにあるコンビニではなく、ここ(ミニストップ)に来た、というお客さんがいてうれしい」「久々に活気が出てきた」などと、前向きな意見が多く寄せられているという。

 今のところ、「おにぎり100円」は良い効果を生んでいるようだ。竹内氏は「今後は、おにぎりとファストフードの2本柱で立て直していきたい。おにぎりは、年間を通じて日常的に買ってもらえる商品。ソフトクリームやハロハロに続く看板になれば」と意気込む。スープや麺類など、おにぎりとの買い合わせを念頭に置いた商品の品ぞろえを充実させるなど、効果的な仕掛けも考えていく。

 「100円」という価格には圧倒的なお得感があり、客を呼び込むインパクトがある。だが、それだけではなく、“分かりやすさ”も大きな要素となっているようだ。「おにぎり100円」は、ミニストップを支える太い柱になっていくのか。今後の展開に注目したい。(ITmedia)