【スポーツi.】“日の丸案件”は別格… 最高峰の技術が日本を元気にする

 
ラグビーW杯準々決勝の日本対南アフリカ戦で攻める日本のリーチ・マイケル主将=20日、味の素スタジアム

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会の盛り上がりがすごい。日本代表は、残念ながら準々決勝で南アフリカに3-26と敗れたが、歴史的なベスト8に進出した。その南ア戦のテレビ視聴率は41.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。日本の人口は1億2615万人(9月1日現在概算値、総務省統計局ホームページから)という。単純計算だが、約5200万人が視聴したことになる。驚異的な数字である。

 ラグビーW杯に熱狂

 パブリック・ビューイングでの熱狂ぶりもすごいと聞いた。ルールも分からず、普段は無関心の人々の心も躍らせ動かされたのか。潜在意識の中にある“ナショナリズム”であろう。

 日の丸を背負った軍団が世界を相手に駆け巡り、撃破する。隠れていた愛国心が頭をもたげてアドレナリンを一気に放出する。サッカーW杯然り、野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では過去、世界一が2度…。あるテレビ局関係者が言っていた。

 「視聴率が取れない昨今ですが、“日の丸案件”は別格…」

 国を愛する心はすごい。

 ところで…。ラグビー日本代表選手たちが、よく口にしている言葉がある。

 「ONE TEAM」

 こんな言葉もある。

 「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」(1人はみんなのために みんなは1人のために)

 誰かのために自己犠牲して次につなぐ姿…。しかもラグビーはサッカーに比べ、フィジカルコンタクトが激しい。そこに仲間を守るという意識が見える。日本人は昔から“個”より“仲間”を、“組織”を優先させて歩んできたお国柄である。社会生活における近所付き合い、会社などの組織など…。日本人に根付く“共に”が、ラグビーの中に見えたのだろう。

 もっとも、どんなスポーツでも最大の魅力は、アスリート個々が持つ高い資質である。秀でた資質に一般凡人は憧れる。

 大リーグで19年、次々と記録を塗り替え、今年引退したイチローさん(元マーリンズなど)の言葉がある。

 「“できなくてもしようがない”は、終わってから思うことであって、途中にそれを思ったら、絶対に達成できません」

 高い壁を乗り越えて最高のパフォーマンスを生む。人々の夢をかなえる代理者かのように。そんな姿に人々は憧れ、勇気づけられ、歓喜する。組織を牽引(けんいん)するのだって、アスリート個々が持つ高い資質が必須である。そんな高みに感動し、見る者はそこから元気をもらえる。

 時には、勝者と敗者に分かれるかもしれないが、高いレベルではどちらにも“やりきった爽快感が美しい。それこそスポーツの“魔力”であろう。

 今週は世界級ゴルフ

 そんな“世界最高峰レベル”アスリートが今週やってくる。男子ゴルフ「ZOZOチャンピオンシップ」(24~27日、千葉・習志野CC)である。

 米ツアーとの共催で、初の日本開催である。世界ランク1位のB・ケプカをはじめ、R・マキロイ、J・デイらプレミアムなメンバーがそろい、松山英樹も凱旋(がいせん)する。その高い技術力はファンを魅了するはずだ。

 “レジェンド”タイガー・ウッズもいる。2006年のダンロップ・フェニックス以来13年ぶりになるが、今年4月、マスターズを制して通算81勝(メジャー15勝を含む)、世界ランクは10位にいる。その実力は、健在である。

 「(今年の8月に)手術した左膝の状態は大丈夫だ。今回で5度目の手術、確かに年を重ねるごとに悪くなっているけど、これまでちゃんと対応できているし、ストレスはない。もちろん来年の東京五輪にも出たい」

 チケット8万枚が既に完売している。日本の男子ツアーは低迷しているが、最高峰の技術にファンは飢えていたのだ。日本ツアーの選手会長、この大会にも出場する石川遼は言った。

 「これに刺激を受けて日本ツアーを再び盛り上げたい」

 ラグビーW杯に続き、今週の米ツアー…。来年は東京五輪も控える。日本中を元気にする最高峰のスポーツの存在。日本で開催されることを喜びたい。(産経新聞特別記者 清水満)