【近ごろ都に流行るもの】「幼児からの科学実験教室」 好奇心伸ばして目指せノーベル賞
不思議なことが大好きな子供たちが「科学実験」に夢中になっている。水、風、光、静電気など身近な自然界の現象をテーマに、「なに、これ?」という素朴な疑問と答えを引き出す。論理的思考を高めてほしいという親の期待も大きいそうだ。なんでも動画で見れば分かったつもりになれる現代だからこそ、自分で確かめる実験の手間には意味があるようで…。実験教室を行っている保育園を訪ねると、小さな手を動かして熱中する姿に感心。ここから「未来の大科学者」が出るかも!? (重松明子)
「この布、フェルトっていいます。ぬいぐるみなんかに使われています。この布に水を垂らしたら、どうなる?」「濡れちゃうー」。斉藤純一講師(46)の呼びかけに、大きな声で答える園児たち。「さあどうなるでしょう」と促され、小さな手でスポイトをつまむと…「わ! 丸くなってる」「膨らんでる」。初めて見る水の表面張力の粒に、幼い顔がくぎ付けだ。
東京都港区の「にじのいるか保育園 芝浦」で、4~5歳児19人が、「水」がテーマの実験に取り組んだ。絵の具と洗剤を使って水面模様の変化を観察する「マーブリング」など3つの実験から、水の分子結合と界面活性剤の働きを学ぶ。60分間、最後まで誰ひとり勝手に席を立つこともなく、集中する姿に驚いた。
「幼児の集中力は5分が限界といわれますが、楽しく興味が持てればここまでもつ。実験のあった日は、迎えに来た親に『面白かった』『こんなことやったよ』と伝える姿が見られます」と主任保育士の飯塚千夏さん(39)。
斉藤講師も「幼児には目に見えない物を理解する想像力がある」と指摘。「実験中は思ったことをどんどん発言させて、間違っていても絶対に否定しない。科学って『人と違うこと』を考える学び。そこから、ノーベル賞のような高みに到達する科学者が出てくるんですから」
同園では5年前から「サイエンス倶楽部」(本部・中野区)の出張授業を2カ月に1回ペースで依頼している。仁井友紀乃園長(41)は「子供の可能性を広げたいという教育意識の高い保護者が多い地域で、園の独自性を打ち出す狙いもありました」と話す。
実験によって、子供たちも植物や太陽など自然界への興味を強めているようだ。「お散歩の時間にも、いろいろなものに興味を示して観察している。科学図鑑を見て『これやりたい』と次の実験テーマを提案する子もいる。好奇心が行動に直結する幼児期の興味や意欲を、すくすくと伸ばしてあげたい」と仁井園長。
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サイエンス倶楽部は昭和63年、東京・高円寺の医療系専門学校が、実験室の空き時間を活用して始まった子供向け実験教室の草分けだ。現在、首都圏を中心に16教室あり、4~18歳の約4000人が通っている。
統括責任者の広永雅史専務(55)は、「2000年代のいわゆる『ゆとり教育』への不安、特に理科に対する子供の興味・関心が薄れ学力が低下する『理科離れ』に危機感を持った保護者に共感され、規模が大きくなっていきました」と説明する。
仮説を立て、目的や方法を決め、実験に取り組み、結果を考察する…。一連の思考プロセスを小さいうちから身につけて、文系・芸術系などオールジャンルに通用する論理的思考や創造力を育てることが一番の目的だ。
とはいえ、卒業生の大半は理系学部に進学。現在も約100人のOB・OG学生がアルバイトの助手や講師として子供たちを教えている。
「東大や東工大はじめ、目的意識を持って進路を選んでいる。実験教室はピアノや水泳のような『お稽古事』の位置づけで、塾ではありませんが、理科の本質への理解が結果的に受験にも役立っているんでしょうね」と広永さん。
3年前から自然科学に加えてプログラミング教育も始めた。「今の子たちが社会人になるころには、共通言語として必要な能力になります」
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9日にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(71)は子供時代に、便所掃除用の塩酸にくぎをほうり込んで水素が発生する様子を観察していたという(10日付産経新聞記事より)。驚きや気付きは案外、身近な所に“生”で潜んでいる。今の子供たちに伝えたい、科学の豊かさを教えてくれるエピソードだ。
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