えっ、日本産でない? 世界を「韓国の納豆」が席巻する前にすべきこと

 

 マスコミによれば、今年の鍋のトレンドは「発酵鍋」らしい。

  「は? 何それ?」という方のために説明すると、「みそや甘酒といった和の伝統食品からキムチ、チーズまで、さまざまな発酵食品を具材やつけだれに使った鍋のこと」(産経新聞 9月27日)らしく、先週もこんな感じで紹介されていた。

 『令和初の鍋シーズン トレンドは「発酵鍋」』(テレ朝NEWS 11月7日)

 そのニュース映像の中で、1日1個は必ず食す納豆好きとしてはたまらない鍋があった。長芋となめこに加え、ドーンと納豆を山盛りにした「腸活! 発酵ねばねば鍋」。アンケート調査などから「発酵鍋」を今年のトレンドに選出した「ぐるなび」が一例として開発したレシピだという。

 と聞くと、「どうせメーカーとかが無理に流行らせたいだけでしょ」なんて意地の悪いことを言う人もいるだろうが、こういうブームで飲食業界が盛り上がるのなら結構な話ではないか。個人的には、ラグビーW杯同様に「にわか」でもいいので、積極的にブームに乗っかっていきたいと思っている。

 が、その一方で、発酵食品を愛する一人の日本人としては、同じブームを仕掛けるにしても国内外食市場、鍋調味料市場という小さなパイではなく、世界に対してもっと積極的に「日本の発酵食品」をPRしていただきたいという気持ちも強い。

 その中でも特に気合いを入れてアピールしなければいけないのが「納豆」だ。これが日本の伝統的な食品だということを世界にしっかりと示しておかないと、そう遠くない未来に、悔やんでも悔やみきれない事態が起きてしまう恐れがある。

 それは、「納豆」が「韓国食品」として世界を席巻してしまうという恐ろしい事態である。

韓国産の納豆が世界を席捲する!?(写真提供:ゲッティイメージズ)

  「そんなバカなことが起きるわけがないだろ! そこまでして日本をおとしめたいのか、この反日ライターめ!」といった怒りのコメントを書き込もうという人もいるだろうが、今の「納豆」を取り巻く世界の情勢を冷静に聞いていただければ、そこまで荒唐無稽な話ではないことが分かっていただけるはずだ。

 市民権を得つつある「natto」

 順を追ってご説明しよう。まず、世界的な健康志向の高まりから「日本食」がブームになっており、その中でも発酵食品が人気になっていることに異論を挟む方はいないのではないか。

 農林水産省によると、海外の日本食レストランの数は2006年に2万4000店だったが、13年には5万5000店、17年には11万8000店へと急増。これにともなって、しょうゆと味噌の輸出も増加しており、東京税関によると昨年の醤油と味噌の輸出は数量・金額ともに過去最高を更新。醤油は70カ国、味噌が53カ国へ輸出されたという。

海外で日本食レストランが増えている(出典:農林水産省)

  「いや、味噌や醤油は外国人でも受け入れられるが、においのキツい納豆はムリだ。周囲の外国人はみんな気持ち悪いと言っていたぞ」と主張する方もいらっしゃるだろうが、そういうネガティブのイメージも「スーパーフード」として注目されていることで、少しずつだが変わりつつある。

 例えば、米国には「NY rture NEW YORK NATTO」という、日系アメリカ人のアン・ヨネタニ氏が納豆メーカーを設立。健康効果の高い納豆を世界に広げることをミッションにして活動。インスタグラムにはレシピを紹介している(参照記事参照記事)。

 また、米国のナチュラルフードを扱う専門店などには、日本から輸出された「natto」が並び、その品ぞろえが充実してきている。実際、財務省の貿易統計によれば、納豆の17年の輸出先によれば、韓国の約226トン(約1億400万円)、中国の約214トン(約1億900万円)を抑えて、米国が約694トン(約3億6400万円)と最も多い。

 もちろん、一般の人々にまで浸透はしていないものの、健康に対して意識高い系の人たちには「natto」は、着々と市民権を得つつあるのだ。実際、スーパーモデルのミランダ・カーは2016年からマルコメの「発酵食アンバサダー」としてテレビCMに起用しているが、これはジャパンマネーで無理に引っ張ってきたわけではなく、ミランダ自身が味噌汁を愛飲していたからだ。

 彼女のようなセレブの間で、健康や美容にいいということで「miso」が静かなブームになっている。ということは、スーパーフードとして知る人ぞ知る存在となってきた「natto」もいつ火がついてもおかしくないのだ。

 「韓国食品」として世界を席巻

 では、そんな大きなポテンシャルを秘めた「日本の納豆」が、なぜ「韓国食品」として世界を席巻してしまう恐れがあるのか。それは、韓国を代表する巨大食品メーカーが製造する「納豆」がこのわずか3年の間に、3倍の市場規模へと急成長しているからだ。

 韓国好きの方ならばご存じかもしれないが、「プルムウォン」という韓国の食品企業がある。分かりやすい説明が同社のWebサイトにあるので引用させていただこう。

 「韓国の代表的健康な食品企業であるプルムウォンは国内で生鮮食品と飲料を中心に健康機能食品、給食とコンセッション、オーガニック食品の流通、ミネラルウォーター、ヨーグルトなど、多様な領域で事業を展開しています。

 1991年米国で法人を設立して、以来中国と日本にも法人を設立し、世界1位の豆腐企業での地位を確立し、グローバル企業として成長し続けています」

 実はこのプルウォム、06年から「納豆」の製造を始めている。「なんで?」と首をかしげる人も多いかもしれないが、実はかの国では近年、中高年を中心に「納豆」が定着しつつある。背景にあるのは、「ウェルビン」(WELL BEING)という健康を追求するライフスタイルだという。

 「プルムウォンによると、市場調査機関の統計では、韓国の納豆の市場規模は2014年に109億ウォン(約10億9千万円、円はウォンの約10分の1)だったが、15年157億ウォン、16年250億ウォンと急成長し、17年には、14年の3倍の324億ウォンに達した」(産経新聞 1月31日)

 この勢いはすさまじく、実は韓国にもチョングッチャンという、伝統的な大豆の発酵食品があるが、市場としては納豆のほうが抜き去ってしまっているのだ。

韓国で納豆市場が大きくなっている

 ここまで言えば、筆者が何を言わんかご理解いただけたのではないか。韓国を代表するグローバル食品企業が「納豆」を13年間製造してきて、見事にここまで市場を大きく成長させた。そして、同社の米国現地法人プルムウォンUSAは、米国に4つの工場を持つだけではなく強力なネットワークを有している。再び同社のWebサイトを引用しよう。

 「2004年には大豆加工食品会社であるワイルドウッド、2009年には冷蔵食品会社であるモントレー・ゴメイフードを買収し、メインストリーム市場への進出に成功しており、2011年はアメリカの高級健康食品チャンネルであるナチュラルマーケットでプレミアム豆腐市場占有率1位に上りました。 2016年はビタソイの豆腐事業権を買収し、強力なブランドパワーと約2万ヶ所あまりの営業流通網を確保して、アメリカ豆腐市場1位の企業として跳躍しています」

 欧米を中心に「natto」ブームが起きたら

 もし米国をはじめとした欧米のセレブを中心に「natto」ブームが起きたら。プルムウォンはこれらのネットワークを生かして、市場に攻勢をかけることはたやすいはずだ。

 「いや、韓国の納豆などよりも、日本の納豆のほうがうまいに決まっている。ニセモノなど相手にされない」」とムキになる人もいると思うが、残念ながら、大多数の米国人にとっては「日本の納豆」だと言われて、「プルムウォンの納豆」を出されても、その違いは分からない。なぜそんなことが言えるのかというと、海外に氾濫する「韓国人が経営する日本食レストラン」だ。

 海外旅行をして実際に見かけたという方も大勢いらっしゃると思うが、「日本食レストラン」を名乗っているものの、実は中国人や韓国人が経営をしているケースが多い。そこではなんだかよく分からない「エセ日本食」を出すだけではなく、明らかにおかしな日本文化を発信している。

 その分かりやすい例が米カリフォルニア州サンディエゴにある「独島寿司」(Dokdo Sushi)。呼んで字のごとしの韓国人経営。「日本の伝統食を汚すだけではなく、竹島まで名乗って侮辱するとは許せん」と怒りで気がヘンになってしまう愛国心溢れる方も多いと思うが、もっと腹ただしいのは、この店が出す「オリンピックロール」などの奇妙なメニューを、「日本の寿司」だと誤解している米国人が大勢いることだろう。

 また、ご存じのようにかの国は、日本のさまざまなものを「韓国起源」として言い張る傾向があり、実は寿司や刺身ももともと韓国が起源だと主張している人たちもいるのだ。もちろん、プルムウォンのような大企業はそこまで大胆なことをしないだろうが、納豆が世界的に人気になれば当然、「実はあれは韓国起源なのだ」とか触れ回り始める人が必ず出てくる。また、日本食レストランのように、さも日本メーカーのようなフリをして欧米のナチュラルフード市場に攻勢をかける者も現れるかもしれない。

 そのとき、「そんなのデタラメだ! 納豆は日本の伝統食だ!」と声を枯らしても、市場のシェアを握られていては負け犬の遠吠えである。「インチキ寿司」が海外で市民権を得てしまったように、「韓国納豆」が社会に定着してしまう最悪の事態もあり得る。

 だからこそ、ブームになる前に、「納豆は日本のもの」だと声高に主張していくことが必要なのだ。もちろん、言うだけではいけない。米国で「natto」を支持してくれる人たちが現れたのならば、それを日本政府や業界団体をあげてサポートしていくべきだ。

 世界に向けた情報発信を

 せっかく東京2020で世界中から観光客が集まるのだから、そのタイミングをフル活用するのもいいだろう。チーズなど世界中の発酵食品を集めて、「発酵オリンピック」なんて開催して、味噌、醤油、納豆、塩麹、漬物などの魅力をアピールして、日本が「発酵先進国」だというプロモーションを仕掛けるのだ。

 「何もそこまで必死にならなくても」と笑う人もいるかもしれないが、相手はもっとハングリーだ。我々が思う以上に貪欲に「日本の食品」の座を狙っている。

 例えば、08年6月4日、「中央日報」の電子版では、韓国の調味料会社「トンウンFC」が米国に支社を設立して世界戦略を開始すると報じた。そこにはこんなことが書かれている。

 「世界市場で韓国の伝統発酵食品のしょう油が日本の製品のように認識されていることを正したいという。初期には日本のテリソースをベンチマーキングして世界市場に軟着陸した後、世界の人の舌を変えていく計画だ」

 また、韓国で「醤油の名人」と言われるセムピョ食品の副社長は、日本の醤油製法の秘密をどうしても知りたくて、1986年にヤマサで味噌製造現場を見学。麹菌を繁殖させる麹室でできるだけ大きく空気を吸い込んで鼻の中に菌の“種”である胞子を集め、部屋から出るなりすぐにティッシュで鼻をかみ、帰国後にその成分を徹底的に研究したという、驚きのエピソードもある。

 この貪欲さを思えば、「納豆」もうかうかしていたら危ない。気がつけば、「あれ? 知らなかった? 納豆ってのはもともと韓国が本場だよ」なんてことを世界中で触れ回っているかもしれない。

 「慰安婦」や「独島」の問題も然りだが、日本人は、相手が世界中で大騒ぎをして既成事実化した後で、「あれはインチキだ」「うそをまき散らすな」と後手に回ることが多い。

 「発酵鍋」のようなブームを仕掛けて、国内市場を成長させることも確かに大事なことかもしれないが、後で泣きをみないためにも、ぜひ納豆メーカーの皆さんには「先手」をうって、世界に向けた情報発信にも力を入れていただきたい。(ITmedia)