メーカー

ぺんてる買収合戦でOB・社員引き裂かれる コクヨとプラス、どちらに

 文具大手のコクヨ(大阪市)が筆記具大手ぺんてる(東京)に仕掛けている敵対的買収が、ぺんてるOBや社員を巻き込んで泥沼化している。コクヨに対抗し、同じ文具メーカーのプラス(東京)がぺんてるの友好的な第三者「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として株の買い付けに参戦。両陣営はぺんてるOBに代弁させる形で互いに批判し、株主の切り崩しを競っている。(山本考志)

■OBからの手紙

 コクヨが11月15日にぺんてる買収の方針を発表して以降、ぺんてる株主のもとに、内容が正反対の2通の手紙が届いた。

 「コクヨの敵対的買収が成立すれば、ぺんてるの存続自体が危うくなる」

 1通目は11月20日付で、コクヨを厳しく非難する内容だ。名義は創業家以外から初めてぺんてるトップに就いた元社長。コクヨの買収を「ぺんてるを完全に支配するために手段を選ばない動き」と切り捨てた。

 「現在のぺんてる経営陣の考え方には大反対」

 2通目は同24日付で、ぺんてる側を糾弾する内容。名義はぺんてるOB会会長を務める元専務だった。プラスに株式を取得させるぺんてるの手法について「社員たちがあえて苦労するような判断をする今の経営陣は、自分たちの保身だけを考えている」と内部の視線から疑問を呈した。

 コクヨは今月9日を期限にぺんてる株を買い付け、保有比率を現在の約38%から過半数まで引き上げて連結子会社化する方針。

 これに対しプラスは11月21日、商品開発で協業してきたぺんてるから要請を受け、ぺんてる株を最大33・4%まで取得する方針を発表した。期限は12月10日。もし33・4%に達すれば、合併や事業譲渡といった重要事項について株主総会で拒否権を持つことになる。

■退職金以上の利益

 ぺんてるは非上場で、関係者によると株主は約300人。OBや創業家、取引先関係者が多いという。コクヨとプラスのどちらに株を売却するか、または保有し続けるか-OBらは古巣の将来への選択を迫られ、苦悩の日々が続く。

 一方、ぺんてる株を持つ従業員も今回の騒動に揺れる。ぺんてる関係者によると、同社は長らく、従業員の退職時などに1株あたり125円の売却額を提案してきたという。

 しかしコクヨはまず1株当たりの買い付け額を3500円と発表。プラスが同額での買い付け計画を示すと、コクヨは11月20日に3750円、29日には4200円へと引き上げた。

 関係者は「従業員がコクヨの買い付けに応じれば会社に伝わってしまうが、保有数によっては退職金以上の売却益を得られる。頭を悩ませている人は多い」と明かす。

■企業価値損なう恐れ

 コクヨはぺんてる従業員向けに相談窓口を設け、保有株売却などをめぐって会社側から強圧的な指示があれば、会話や文面を提供するようホームページ(HP)で要請。ぺんてるもHPでコクヨの要請を「社内文書の持ち出しなどを推奨しており、情報漏洩の教唆に該当しかねない」と反発するなど、舌戦が続いている。

 両陣営の間でOBや従業員らが引き裂かれて反目する事態になれば、将来の経営に禍根を残し、企業価値を損なう恐れもある。