ヤマダ会長、子会社化する大塚家具社長に「チャンス与える」

 
会見でヤマダ電機の大塚家具子会社化を発表した大塚家具の大塚久美子社長=12日午後、東京・京橋(桐山弘太撮影)
会見でヤマダ電機の大塚家具子会社化を発表し、握手するヤマダ電機の山田昇会長と大塚家具の大塚久美子社長(左)=12日午後、東京・京橋(桐山弘太撮影)

 経営再建中の大塚家具のヤマダ電機による子会社化発表を受け、ヤマダの山田昇会長と大塚家具の大塚久美子社長は12日夕、東京都内で記者会見を行った。赤いスーツ姿で登壇した大塚氏は、創業者で父の勝久氏に「事前に伝えた」と語ったものの、やり取りの内容は伏せ、続投して黒字化する決意を強調。76歳で勝久氏と同じ年齢の山田氏は「大塚氏の方向性は間違っておらず来期黒字化の手応えもあり、テコ入れでチャンスを与える」と後押しした。主な質疑は次の通り。

 【冒頭説明】

 大塚氏「社長を引き受けて11年、令和の時代にも通用するあり方を模索してきた。大塚家具は『一人一人にとっての上質な暮らしの提供』をミッションに、暮らしを豊かにする家具を提供するブランド。この理念やDNAを継承し時代に合った大塚家具にするために、あえて父の時代のやり方を変えなければならないこともあった。抜本的構造改革で黒字あと一歩までくることができ、さらに発展させるため、単なる家具提供企業ではなくトータルに生活提案ができるようにしたいと考えて提携を決めた。ヤマダ電機と家電・家具の枠を超え、日本の新しい暮らしの選び方を提案する」

 【質疑】

 --大塚氏は社長としての進退は

 大塚氏「引き続き全力を尽くす。提携を軌道に乗せることが責任だ。一番大事なことは、事業者側都合でない、本当に素晴らしい暮らしをお客さまにどれだけ提供できるかだ」

 山田昇・ヤマダ電機会長「大塚氏の方向性、考え方は間違っていないと思う。2月の提携以来、改革の進捗(しんちょく)を見てきた。協力して双方の強みを発揮すれば、立派にできる」

 --父の勝久氏には相談したか

 大塚氏「事前に伝えております」

 --どんな返事が

 大塚氏「そこは、あえて申し上げない」

 --大塚氏はこれまで白いスーツが多かったが、きょうの赤いスーツの意味は

 大塚氏「なかは白です。明るい気持ちでやりたいな、ということ」

 --大塚家具の黒字化のメドは

 山田氏「来期は黒字化を目指せるとの手応えを感じたから、出資を決めた。家具は粗利が高い。売上高が10%も伸びれば黒字になる。記者のみなさん方に騒がれ、えらい目に合ってきたと思うんですよ。その分の経営損失はものすごく大きい。そういった面もあるなかでがんばってこられた。テコ入れし、信用不安を解消すれば、すぐ回復しますよ」

 --子会社化で、大塚氏の進退は突き詰めれば山田氏が握ることになる。結果が出なければ代える考えもあるか

 山田氏「ヤマダの考え方は、結果主義だがその代わりチャンスは与える、というもの。『来期の黒字化』という目標を立てたわけで、そこはまずチャンスを与える。達成のためにはヤマダの経営資源を入れて支援する。そういうなかで考えていけばいいのではないか」

 --相乗効果は

 山田氏「家電と家具は親和性が高く、理想の組み合わせ。ヤマダが家具を扱い始めてまだ間がないが、大塚さんとの提携で商品の幅が広がり、『暮らしまるごと』で住環境全体を提案するという理想に近い売り場が体現できるようになった。大塚さんの家具は、ここ最近のいろいろなことがあったからかもしれないが、知名度が高くて非常に好評だ。その結果、女性客が増え、売り上げも伸び、購入単価が上昇している。以前は5万円の家具がなかなか売れなかったが、(大塚の商品が)10万円や20万円と並ぶとどんどん売れるようになった。いいダイニングテーブルと椅子で商談し、いいテレビを売れば、いいソファも売れる。法人からの引き合いも強くなっている。非常にシナジーがある」

 大塚氏「ノウハウの相互提供で、大塚家具店舗でも8Kなどの高級家電とラグジュアリーな家具、ホームシアターなど、トータルな空間提案ができるようになる。ラグジュアリー層にはさらに力を入れる」

 --消費者の具体的メリットは。ヤマダポイントが大塚家具購入でも付くとか

 山田氏「それは、明日からでもやろうと思えばできる。あらゆる面で可能性を追っていきたい」

 --黒字化達成の方策は

 大塚氏「店舗数や面積など、構造改革は今年前半までに一巡したと思っている。売り上げを上げていくところに入ってきたかなと。(ヤマダの資本注入で)安心して利用していただける状況になった」

 山田氏「子会社としての利益は初年度は当てにしていないが、2年目以降は事業計画を立てていきたい。商品の共同開発もしたりしていけば、(約44億円の投入資本分は)3年ぐらいで回収できるんじゃないでしょうか」