かんぽ問題 民営化後の検証せず、政治にも責任 柘植芳文参院議員

 

 かんぽ生命保険の不適切販売問題を生んだ背景を掘り下げるには、郵政民営化法が2012年の改正前後で本当にうまく改正の趣旨が生かされてジョイントできているかを突き詰めていくことが必要だと考える。

 改正民営化法では郵便だけでなく、貯金や保険にも「ユニバーサルサービス」の義務が課され、金融2社の株式売却も努力目標に変わった。各社が支え合う一体経営が求められているのに、旧民営化法を引きずり連携ができていない。法改正に合わせ、本来見直すべきことがあった。

 例えば、かんぽの保険の9割を日本郵便が販売するが、販売施策に関する権限は委託元のかんぽにある。現場の声を反映した施策ができるよう日本郵便に裁量を与えるべきだ。販売に応じ手数料を払うだけでなく郵便局ネットワーク維持のための経費を賄う仕組みもつくればよかった。

 民営化そのものは誤りでなかったかもしれない。だが、経営の自由度を上げてきちんと収益を上げる民営化の狙いが出し切れていない。あれだけ大きな政局になったにもかかわらず、政治が民営化がどういう形で進んでいるかという検証を怠っているのも問題だ。かんぽ問題は事象面だけを捉えて処理するのではなく、郵政事業の本質論を議論し改革につなげるための好機だ。

 郵政グループのトップの会見や会議での話を聞いていると、あまり責任感が感じられず、言葉の重みも伝わってこないように思える。トップの打ち出す改善策や改革が現場に信用されていない。現場からの信頼を取り戻す努力を期待する。今、必要なのは腕力のあるリーダーだ。持ち株会社であれば、子会社の実態や問題点をつぶさに把握し、グループ間を調整する力やグループ力を結集して新たなビジネスモデルを作り上げていく創造力のある経営者が望まれる。(談)

【プロフィル】柘植芳文

 つげ・よしふみ 1977年名古屋森孝郵便局長。2009年に全国郵便局長会会長に就任し、郵政民営化法の改正を後押し。13年に参院選で初当選し、現在2期目。自民党所属。74歳。岐阜県県出身。