廃業銭湯がビール工場に変身 土日は牛乳瓶入り直売 大阪・東淀川

 
廃業した銭湯を改装したビール醸造所「上方ビール」で、タンクを見る社長の志方昂司さん=11月、大阪市
「上方ビール」で販売するクラフトビール

 JR新大阪駅から北東に1キロ余り。大阪市東淀川区の住宅街に、廃業した銭湯を改装したビール醸造所がある。男湯だった浴場には仕込みや発酵のための巨大タンクが並び、女湯側はできたてのビールが味わえる直売所に変身。ビールを詰めるのは銭湯ならではの牛乳瓶だ。ユニークさが話題となり、銭湯時代の常連客から外国人まで幅広い客層が訪れ、地域ににぎわいを生み出している。

 タイル張りのレトロな壁に「水風呂」の文字。銭湯の面影が随所に残る。「『あえて残したんですか』とよく聞かれるけど、お金をかけたくなかっただけなんです」と笑うのは「上方ビール」社長の志方昂司さん(33)。これまで立ち飲み屋やバーなどさまざまな業態の飲食店を手掛ける中で、日本ではビールの選択肢がほぼ大手メーカーに限られる状況に疑問を持った。「すし店とピザ店のビールが同じでいいのか」。飲食店のニーズに自由に応える醸造会社の設立を決め、京都市の醸造所で修業した。

 銭湯との出合いは2018年9月。醸造所に使える物件を探していた際、不動産業者から紹介されたのが、17年末に経営者が高齢で休止した「御幸温泉」だった。「ここでビール造ったらおもろいやろな」。直感で決め、活用方法を模索していた銭湯経営者も快諾した。

 醸造に適した環境だと気付いたのは、その後のこと。湿気に強いサウナは、害虫などの侵入を防ぎ、原料の麦芽を粉砕する場所に。浴場には大量の水が使える太い配管や、計3トン超のタンクを置ける頑丈な床が備わっていた。「配管や補強工事は不要で、金銭面でも設備面でもメリットの方が大きかった」と志方さん。今年7月に開業した。

 直売所は土日限定。複数のクラフトビールをそろえ、ロゴ入りの牛乳瓶で提供する。浴場で飲むことができ、食べ物の持ち込みがOK。志方さんは「地元の商店街で買ってきてくれれば地域にも役立てる」と話す。今後はライブや寄席などのイベントも開き、住民や観光客らが交流する場にしたい考えだ。

【用語解説】上方ビール

 阪急淡路駅とJR東淀川駅からいずれも徒歩約10分。土日限定の直売所は正午~午後5時まで営業。180ミリリットルの牛乳瓶入りを500円、330ミリリットルの瓶入りを800円で販売する。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳をイメージしたビールもある。飲食店向けに受託醸造を20リットルから受け付けている。問い合わせは同社、電話06(6829)6550。