ドローンで山小屋に物資を届けたい 輸送費高騰ヘリコプターの代役務まるか
白馬岳や杓子岳(しゃくしだけ)、白馬鑓ケ岳(やりがたけ)の、いわゆる「白馬三山」が連なる長野県白馬村で、山小屋までドローンを活用して水や食料などを輸送する試みが始まっている。これまではヘリコプターによる輸送をしてきたが、輸送費の高騰などで、代替手段を講じる必要に迫られているためだ。ただ、過去2回にわたり行われた実証実験を通し、運べる積載量などの課題が浮き彫りになり、村などは、克服に向けた取り組みを急いでいる。(松本浩史)
ヘリの輸送費高騰
村は2018年7月、山小屋の経営者やドローン事業者などでつくる「山岳ドローン物流実用化協議会」を立ち上げ、山小屋への物資輸送にドローンを活用する検討に着手した。
現在、山小屋に輸送される物資は、主にヘリコプターに依存している。だが、航空会社が山小屋への物資輸送から撤退する可能性があったり、人件費などがかかるため輸送費の値上げに踏み切ったりするなど、手をこまねいていては将来的に、物資を登山者に提供できない山小屋が出かねないという危機感があった。
1回目の実証実験は2018年10月に実施。八方尾根スキー場の黒菱林道終点(1500メートル)から八方池山荘(1850メートル)までの約1キロで、コメやイワナなど重さ3.2~8キロの物資を計5往復輸送し、特段のトラブルはなかったという。
2019年9月の2回目の実証実験は▽猿倉(1240メートル)~白馬尻(1550メートル)▽白馬尻~2号雪渓(2022メートル)▽2号雪渓~頂上宿舎(2709メートル)の3ルートで実施。頂上宿舎までのルートは天候不順のため中止となったが、2.5キロのレタスなどを支障なく輸送できた。
課題が山積
村観光課によると、ヘリコプターによる輸送の場合、1回で500キロから1トンの物資が運べるという。2回の実証実験の最大積載量は2018年時のコメ8キロで、現在のままでは実用化はほど遠い。村などは当面、最低でも1回約50キロの物資が輸送できることを目指しているが、「実現できたとしても、ヘリコプターの代用として、補完的にしか使えない」と話す。
ドローンの積載量を増やすことについては、深刻な課題に直面している。標高が高くなると空気が薄くなるため揚力が少なくなり、積載量が減少。揚力を大きくするためにプロペラの回転数を上げれば、バッテリーの大容量化が必要になる。だがそうなると、バッテリーの大型化が避けられず、機体の総重量が重くなる。重くなれば、輸送距離が伸びない懸念も生じる。
また、起伏の激しい山間の地形を飛行するので、電波が届かなくなる事態も予想される。強い風が吹いたときなど、きちんと機体の水平を保てるのかも問われる。墜落したら物資の損失はもとより、登山者にけがを負わせる危険性もある。
めどは立たず
実用化には多くの課題が山積している。ただ、村では2回の実証実験を通じ、安全を確保できる飛行ルート構築のノウハウが蓄積できたとしており、「将来的には必ず実現させたい」としている。
実証実験は今年も行われる予定だといい、村では昨年中に協議会を開き、浮き彫りになった課題を解決できる方策を検討するとともに、実験をより有意義にするため、そのやり方を話しあったという。
村内の山小屋は8施設ある。いずれも建物の老朽化が激しい上、食事のメニューが少ないなどの課題を抱えている。ただ、登山者にとって山小屋は、飲食や宿泊のできる施設としてだけではなく、災害の発生時には緊急避難所として利用できるほか、体調を崩した際には診療所としての役割も果たしてくれる。ひとたび山に入れば、公共的な唯一の施設だ。
ヘリコプター輸送の代替が期待されるドローン輸送。だが残念なことに、実用化のメドは現時点では立たない。ただし、山小屋の経営にとってその行方は、死活問題に直結する重大事なのである。
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