【2020 成長への展望】三井物産社長・安永竜夫さん(59)

 

 アジアで環境・健康分野開拓を重点

 --世界景気の行方は

 「不透明感があるのは間違いないが、フロンティアガイドとして、環境変化に対応し、機敏性をもち新領域を開拓していく。南米はいい時も悪い時もある。ブラジルのガス配給事業のパートナーの国営石油会社が業態変革の一環でガス供給事業からの撤退を検討しているが、チャンスと捉えて新局面への対応を検討している。インド経済はモディ政権の改革副作用もあり、やや停滞するが、巨大な国内消費が見込まれる。二輪車も四輪車も同時並行という感覚で、昨年、電動三輪車のライドシェアのスタートアップに出資した」

 --重点分野に環境と健康を掲げる

 「脱炭素という先進国の議論を、新興国に一方的に押しつけても解はでない。太陽光や風力発電で全て賄える時代がくれば理想だが、まずは、石炭から、温室効果ガスの排出量が少ない天然ガスへの転換が現実的だ。需要が増えるアジアでは、液化天然ガス(LNG)輸入や輸送インフラまでの提案が必要だ」

 --ロシア北極圏LNG開発への参画を決めた

 「北極圏でのプラント工期リスクを懸念する声もあるが、事前にモジュールで建設したものを据え付ける方法が実証済みで採算性を確認した。価格競争力のあるLNG開発と両輪で販売網も整備する。輸送まで含めた柔軟な安定供給の腕が試される」

 --筆頭株主となったアジアの病院経営事業は

 「IHHヘルスケアの経営企画にも本社から社員を送り、多国籍チームでインドや中国をどう攻めるか練っている。糖尿病関連の医療機器など周辺事業にも出資してきた。患者のデータ利活用で、治療費の削減や未病対策につながる事業展開も検討したい。そのために、アジア各国の病院を合わせた600万人のデータ基盤の統合にも着手した。例えば個人情報に配慮した上で、新薬開発や医療機器メーカーへのデータ提供の方法や新サービスや新薬成果の利益配分も検討する」

 --2020年度からの新中期経営計画への思いは

 「連結ベースの4万4000人の社員のうち、日本人は半分以下だ。中でもロンドン、ニューヨーク、シンガポールは現地に大幅に権限委譲している。多国籍チームをいかに束ね、組織の力に変え、化学反応を起こせるかが勝負になる。メリハリのある成果主義の導入や、外国人材がわくわくして働けるよう、現地の優秀な人材を約40人選抜し、教育制度をスタートした。日本の年功序列や終身雇用、新卒一括採用も変わっていく。今春、大手町の新本社が竣工するが、主戦場は日本ではない。アジアに飛び出していってほしい」

【プロフィル】安永竜夫

 やすなが・たつお 東大卒。1983年三井物産入社。経営企画部長を経て、2013年執行役員機械・輸送システム本部長。15年4月から現職。愛媛県出身。