【遊技産業の視点 Weekly View】

 

 □シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史

 ■インドネシアでのインバウンドの核は「バリ島」

 インドネシアは総人口が世界第4位の約2億6000万人で、首都であるジャカルタの周辺人口は約3200万人。この首都圏への人口の集中は東京首都圏のそれに匹敵するが、環境汚染が深刻となるなか2019年4月に首都移転が決まった。

 そんなインドネシアにおけるカジノを含めたギャンブル事情だが、世界最大のイスラム人口を有する背景で、イスラム法により厳格に賭博行為が禁止されており、賭博場の開設や賭博行為への参加は刑事罰の対象となっている。また、かかる行為は外国人にも適用され取り締まられることになる。これはオンラインカジノも同様で、海外の会社がサービスを提供するサイトに国内からアクセスして利用することも禁止されている。インドネシアではイスラムの戒律は中東国家の厳格さと比べるとそこまででもないのだが、こと賭博に関しては明確にご法度ということになる。

 しかしながらジャカルタには、オランダ統治時代に造られた競馬場が存在し、不定期の日曜日にレースが開催される。もちろん賭博行為は禁止なので、馬券や投票所、予想紙の類は存在しない。いわゆる草競馬なのだが、観客は普通に盛り上がっている。このような草競馬はインドネシア各地で開催されているようだ。

 一方、イスラム教徒が多くを占めるインドネシアにあって、バリ島だけは古くからヒンドゥー教が主に信仰されている。独自の文化的背景を持つこの島には、18年にインドネシアを訪れた約1500万人の外国人観光客数のうち、約550万人が訪問。インドネシアの観光省はインバウンドの核としてこの島を捉えており、MICE関連施設の整備状況やその数で首都であるジャカルタを上回るなか、13年にはバリ島でAPECが開催されるに至った。

 そんなバリ島では、数年前にゲームマシンによる小規模な賭博施設のようなものがオープンするなど、外国人観光客の余暇を拡充させる動きも確認されている。今後、国内で唯一イスラム教のルールに縛られないこの島が、インバウンドの核としてどのような変化を遂げるのか、その動向が注目される。

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【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆なども手掛ける。