【高論卓説】ベンチャー輩出し続けるシリコンバレー 事業化仲介するスタンフォード大の功績
いまや日本でもベンチャーの立ち上げがブームとなっている。中でも大学発のベンチャーには大きな関心が寄せられ、東大、京大、東北大、九大などでいち早く支援が進み、最近ではAI(人工知能)スタートアップと東大を中心とした本郷エリアの活性化を進める「HONGO AI」のような活動も始まっている。(松崎隆司)
「本郷界隈(かいわい)で創業間もないスタートアップは増えてきているが、こんなもんじゃない。世界的には米シリコンバレーや中国・深センがスタートアップの中心地。このほか最近ではロンドンやカナダ・トロント、イスラエル、ベルリンなども頭角を現している。本郷をシリコンバレーのような世界に通用するブランドにしなければならないと思っている」(東京大学大学院の松尾豊教授)
シリコンバレーとはカリフォルニア州のサンフランシスコベイエリアの南部に位置するサンノゼ、マウンテンビュー、サンタクララなどの総称。
中央カリフォルニアの企業家ラルフ・ヴァーストが1970年に「シリコンバレー」という言葉を思いつき、その友人、ドン・ホフラーが71年1月11日に創刊した週刊新聞「エコノミック・ニューズ」でこの言葉を使ったのがきっかけだといわれている。
「シリコンバレーでベンチャー企業が成長を続けているのは(その中心にある)スタンフォード大の功績が大きいと思います」(サンマテオカウンティ・シリコンバレー観光局)
スタンフォード大の正式名称は「リーランド・スタンフォード・ジュニア大学」。鉄道王のリーランド・スタンフォードとその妻、ジェーン・スタンフォードが1885年12月に、その前年に亡くなった一人息子の名前を残すために創設された。リーランドは「立身と実学」を掲げ、大学での研究と地域社会の産業を一体化することで世界でのトップクラスの大学を目指した。
そのため大学教授たちは産業界や政界のリーダーとの関係を長く続けることが奨励され、ベンチャーの起業を奨励した。
創業者がスタンフォード大出身の企業は、ヒューレット・パッカードをはじめ、シスコシステムズ、イーベイ、イー・トレード、グーグル、ナイキ、オービック、サン・マイクロシステムズ(オラクルが吸収合併)、ヤフー、インスタグラムなどがある。
それだけではない。グーグルのラリー・ペイジやサーゲイ・ブリンが研究を進めた検索エンジンはスタンフォード大の技術ライセンス事務所が特許申請を行い、大学教授数人やサン・マイクロシステムズが支援。同大大学院生だったジョン・チャウニングが開発した初期の電子音楽を事業化するために米国内のみならず、日本のヤマハにまで声をかけたのも技術ライセンス事務所だった。
「米国のオルガンメーカーに声をかけたのですが、どこも関心を示さない。そこでスタンフォード大の技術ライセンス事務所はMBA関係者に意見を求め、世界最大の音楽メーカー、ヤマハに声をかけて事業化を実現した」(コンピュータ歴史博物館のギャラリーインタプラターの山崎敦史氏)
これがヤマハの大ヒット、シンセサイザー、DX7の開発につながり、河合楽器製作所、ローランドなどに広がっていった。大学がどこまで研究開発を事業化にまで導けるかが日本でも今後大きな課題になるのではないだろうか。
【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』など多数。埼玉県出身。
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