新型肺炎、日本企業も戦々恐々 ホンダ出張禁止、ANAは中国・武漢便を欠航…
新型コロナウイルスによる肺炎が発生し、発症者が拡大している中国の湖北省武漢市は自動車産業の集積地で、ホンダや日産自動車が拠点を置く。工場は春節(旧正月)で休みに入ったが、事態が長期化すれば操業に影響が出かねない。また、全日本空輸(ANA)は24日までの成田-武漢の路線で計2便の欠航を決めた。インバウンド需要への潜在的な影響について野村証券は、重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した2003年よりも大きいと分析。経済の下押し要因としての懸念も強まっている。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、武漢市での18年の自動車生産台数は約170万台。市内に現地合弁会社の工場が3つあるホンダは、22日夕から武漢への出張を原則禁止にした。23日からの春節の休暇は2月2日までのため当面、生産に影響は出ないが、3工場の年間生産能力は合わせて約60万台と、同社の中国全体のほぼ半分を占める。広報担当者は「休みの間になんとか収束してほしい」と語った。現地法人の本社がある日産も現地従業員に、家族を含めて感染源とされる海鮮市場に近づかないことや、マスクで感染予防を徹底することなどを注意喚起した。
武漢には部品メーカーも進出。ブリヂストンは自動車シート用素材の工場があり、22日に武漢への出張を当面取り止めるよう指示。サスペンション大手のヨロズは9日以降、武漢や広州への出張を見合わせ、中国から帰国した社員にも検査を指示している。ただ、同社の志藤昭彦会長は23日、「日本にいる中国人の従業員に、春節なのに『帰るな』とは言えない」と、対応の難しさを打ち明けた。
企業の対策も本格化。ソフトバンクは、法人向けサービスを手掛ける子会社の駐在員に在宅勤務を命令。メガバンク3行や東京電力ホールディングスなどは、武漢市への渡航を禁止したり、自粛したりしている。現地で8店舗を展開するイオンは、売り場やバックヤードでの消毒を徹底し、従業員はマスク着用で接客している。
ANAは成田-武漢の路線を1日に2便運航しているが、23日夕の成田発と24日午前の武漢発の便を欠航とした。その後の運航スケジュールについては検討中という。中国でSARSが発生した時は、その余波で出張や旅行での訪日客も減った。野村証券は、インバウンド需要の規模が大きくなっているため、訪日客が減った場合の経済へのインパクトは当時よりも大きいと分析。03年には10%程度、訪日外国人の伸びが鈍化したといい、今回の新型肺炎で訪日外国人が10%減少すれば、「1人当たりの消費額が変わらない前提で、4800億円の需要が失われる」と試算した。
新型肺炎をめぐる主な日本企業の対応
◆ホンダ
武漢にある現地合弁会社の3工場などへの出張を原則禁止
◆日産自動車
武漢にある現地法人本社の従業員らに、海鮮市場に近づかないことなどを注意喚起
◆イオン
武漢のショッピングセンターと総合スーパーの合計5施設で売り場などの消毒を徹底。従業員の体調についての聞き取りも実施
◆JTB
2~3月に企画していた武漢をめぐるツアーのとりやめ
◆ソフトバンク
法人向けサービスを手掛ける子会社の駐在社員に在宅勤務を命令
◆みずほ銀行
武漢への渡航を全面的に禁止
◆三菱UFJ銀行
武漢への不要不急の渡航を自粛
◆三井住友銀行
武漢への不要不急の渡航を自粛
◆SOMPOホールディングス
武漢周辺への出張や訪問を自粛
◆JTXGエネルギー
武漢への不要不急の出張を自粛
◆東京電力ホールディングス
武漢がある湖北省への出張を禁止
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