【高論卓説】相次ぐ長期粉飾決算発覚 支援法が招いた地銀の眼力低下
地方銀行を中心に取引先中堅・中小企業の長年にわたる粉飾決算が露呈するケースが増えている。「昨年6月のバンクミーティングで40年間にわたり粉飾を行ってきたことを明らかにした広島の名門書店『フタバ図書』など、最近になって取引先中堅・中小企業の粉飾が増えていることが気にかかる」(地銀幹部)というのだ。(森岡英樹)
全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)も昨年11月の会見で「融資先の粉飾決算が最近になってみられている。資金繰りがついていて形式上は普通に見えていたが、後になって気が付くケースが出ている」と懸念を示した。複数の会社間で取引を繰り返し、商品や資金が活発に取引されているように見せかける「循環取引」が露呈する案件が増えていることもその証左であろう。
さらに粉飾から倒産にいたるケースも急増している。大手信用情報機関の東京商工リサーチが1月8日に発表した2019年1~12月の「コンプライアンス(法令順守)違反」倒産のうち、粉飾決算が確認された倒産は18件で、前年から倍増した。また、30年にわたり粉飾決算を続けていた「開成コーポレーション」(埼玉県・破産)のように、「粉飾決算の期間が30年、15年、10年など長期にわたるケースが目立った」という。
この背景について、東商リサーチは「粉飾決算は、資金繰りが維持されている間は発覚しにくいが、人件費の負担などから資金繰りが逼迫(ひっぱく)し、金融機関に借り入れ返済のリスケ(返済猶予)を要請する際、粉飾決算が発覚するケースが増えている」と分析している。
例えば、信用保証協会の保証を得るために企業が銀行に提出した財務諸表が銀行ごとに違っていたことが、銀行間の情報交換で発覚したケースなどもあるようだ。メインバンクは資金繰りの実態など詳細な財務状況を把握しているが、その他の取引銀行は相対的に情報が乏しい。こうした銀行間の情報ギャップを利用し粉飾を隠蔽する手口だ。「悪質なケースではA勘定、B勘定など、銀行ごとに8種類も異なった財務内容を提出していた企業もある」(東商リサーチ)というから驚かされる。
なぜ、こうした何十年も隠されてきた粉飾がここにきて露呈しているのか、その背景には、09年12月に施行された中小企業等金融円滑化法により融資の返済を猶予されてきた中小企業が、円滑化法の適用からほぼ10年を迎え、さらなる返済の繰り延べを許されなくなったことが大きく影響しているとみられる。
「中小企業等円滑化法の適用を受けるためには、実効性のある抜本的な再建計画を策定し、金融機関に承認してもらうことが前提になっていた。その俗に“実抜計画”と呼ばれる再建計画の最長期間は10年とされている。その期限到来を控え、再建できなかった企業が退場を余儀なくされ始めた」(地銀幹部)というわけだ。
金融庁幹部も「粉飾はなかなか見抜けないが、貸し手の銀行と企業とが距離があって話をしないので、見抜けないこともあるのではないか」とクギを刺す。
また、銀行間で企業の財務内容の名寄せができていないことも粉飾を許す要因となっていると言っていい。当然、粉飾倒産は地銀の与信コストを増加させ、苦しい決算をさらに苦しいものにしかねない。抜本的な対応が望まれる。
【プロフィル】森岡英樹
もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。
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