金融

新興国への利下げ圧力…日本に波及の可能性も

 2月に入り新興国を中心に政策金利の引き下げ圧力が強まってきた。20日には中国が利下げに踏み切ったが、前日19日にはトルコが、それ以前にはタイやブラジルなどがすでに利下げを決めた。新興国の相次ぐ利下げでドル高が加速しており、米市場では利下げ観測が再燃している。新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、日本にも追加的な金融緩和の動きが波及する可能性が高まる。

 観光業や輸出などで中国への依存度が高いアジアや南米の新興国が、感染拡大による景気減速リスクを回避するため予防的な利下げに動いている。金利引き下げで通貨が安くなれば、輸出が後押しされ、海外からの旅行客の買い物も安くなり、観光業の促進にもつながるとの期待が大きい。

 感染拡大以外にもリスクはくすぶる。19日に利下げを決めたトルコは、シリアで増大する地政学リスクも考慮しており、新興国の“利下げドミノ”は広がりつつある。

 利下げを実施した新興国通貨が売られる一方、景気が底堅い米国のドルが買われ、ドル高が急速に進行している。ブラジル通貨のレアルは5日の利下げ決定後に売りが加速、7日に対ドルで最安値を更新した。

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は産経新聞のインタビューに、新型コロナウイルスの拡大が「国内経済にとって一番大きな不確実性」だと指摘。物価上昇の勢いが損なわれる恐れが高まれば、「躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な措置」をとる姿勢だ。(西村利也)