新型保険「P2P」続々登場 SNS仲間でリスクをシェア
保険のリスクを個人の契約者同士がシェアリングする「ピア・ツー・ピア(P2P)」と呼ばれる新型保険が相次ぎ登場する。革新的な事業の育成を目的とした金融庁の「規制のサンドボックス制度」の特例措置に基づき、アイアル少額短期保険(東京都中央区)とジャパン少額短期保険(同千代田区)が、それぞれSNS(会員制交流サイト)を活用したP2P保険を4月1日から提供する。
金融庁特例に乗り
少短2社はともに、Frich(フリッチ、同港区)が運営するP2P保険のプラットフォームを適用して商品化。SNSでつながっている友人関係をベースに、共通の保険加入ニーズを持つグループを形成し、グループのメンバーが相互扶助する仕組みを提供する。
グループの幹事役となる「オーナー」が保険者となってメンバーから保険料を徴収して保険内容を補償。オーナーが抱える保険金支払いリスクは、少短2社が提供する再保険で全て賄う。また、契約期間内に保険金支払いが発生しなければ翌契約期間の保険料は割引となる。
少短は本来、保険業法で再保険の引き受けが禁止されているが、規制のサンドボックス制度により、グループメンバーを100人以下、補償金額を1人当たり10万円以下とする制限付で金融庁から認定を取得した。
具体的には、アイアル少短は「スポーツ傷害保険」を商品化。スポーツでのけがで入通院したときの費用を補償する。競技人口が少ないスポーツや障害者がスポーツをするときの補償も引き受ける。安藤克行社長は「市場規模が小さくても保険ニーズがあるなら提供するのがわれわれだ」と話す。
一方、ジャパン少短は日本国内のECサイトで購入した商品を自己都合で返品する際の送料を補償する「返品送料保険」を提供する。杉本尚士会長は「無料で返品できるので利用者は気軽に購入できる。返品しやすさが人気になれば、通販業者の売り上げも増える」と、新商品のメリットをアピールする。
利用しやすさPR
少短2社にP2Pのプラットフォームを提供した、フリッチの富永源太郎代表取締役CEO(最高経営責任者)は「保険のスキームが当初のもくろみと違って再保険と認定されたため引受保険会社がなかなか決まらなかった」と振り返る一方、「小さな集団による身近な保険、親しみやすい保険が求められている」と、今回の仕組みの有用性を強調。プラットフォームを今後も提供する考えで、第2弾として犬種特化型メディアを運営するrakanu(東京都渋谷区)と年内をメドに特定犬種に特化したペット保険を共同開発する。オーナーのリスクをカバーする再保険の引受保険会社は、グループメンバーの規模が大きくなる見込みのため、1000人以下まで可能な損害保険会社を想定する。
P2P保険は欧米や中国など海外では普及しているが、日本では少短のjustInCase(東京都千代田区)が1月、国内初となる商品として保険料後払いのがん保険「わりかん保険」を発売したばかり。金融を融通しあう「頼母子講」や「無尽」といった日本古来の精神を引き継ぐビジネスモデルだけに広がりが期待される。(松岡健夫)