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厳しい路線維持…公共交通の未来はコミュニティバスやデマンドで

 高齢者の通院や買い物などに欠かせない、公共交通網の縮小が指摘されている。利用者の減少や高齢化を受けて、無料制度のカットなどに踏み切る自治体が出てきた。一方で、利用者のニーズに応じてより小型のバスや、タクシー車両を運行する「デマンド型交通」の試みも生まれている。高齢者が生き生きと暮らすために欠かせない足を確保しようと、自治体の模索が続いている。(吉國在、小泉一敏、藤原由梨)

実験導入が行われた「乗合いワゴン」(寝屋川市提供)

 厳しい路線維持

 「高齢者の足が奪われないか不安は大きい」

 大阪府高槻市は来年度から市営バスの高齢者無料乗車券(敬老パス)の対象年齢を引き上げることを決めた。同市内で高齢者の軽減料金存続活動を行う「市バス・敬老パスを守る連絡会」の織部巌代表(79)は心配を口にする。敬老パスは高齢者に買い物や市民活動への参加を促すために大きな役割を果たしているからだ。

 昭和29年に営業開始した市営バスは、47年から70歳以上の市民への無料サービスを始めた。ただ、高齢化が進み、無料乗車の比率は年々増えて運営を圧迫する。平成30年は1日平均乗客数延べ約6万1千人のうち無料乗車が4割近くに上った。9年連続で赤字経営が続いている。

 そこで市が打ち出したのが、敬老パスの対象年齢の引き上げだ。来年度から70歳以上にも段階的な自己負担を求め、令和11年度からは75歳以上が無料、70~74歳は1乗車につき100円の自己負担となる。市は「高齢化の進展が著しく、将来的に制度の維持が困難。苦渋の決断だった」と説明する。

 織部代表は「将来の高齢者、これから70歳を迎える人たちのためにも維持してもらいたかった」と訴える。

 目的地を伝えれば

 高齢者の足として、近年注目されるのがデマンド型交通と呼ばれる、利用者の予約があれば希望の乗降場所まで迎えに行くシステムだ。交通経済学が専門の新井圭太・近畿大学准教授は「必要に応じて運行するので、運営側はコストカットができる。バスの場合は利用者の運賃も抑えられる」とメリットを説明する。

 大阪府寝屋川市は昨年12月から、デマンド型交通の一種である「乗り合いワゴン」の実証実験を行っている。高齢者や妊婦が対象で、運転手に電話をかけて住所や氏名、目的地などを伝えるだけでスーパーマーケットや病院などへの交通として無料で利用できる。

 市には民間に委託しているコミュニティーバスがあるが、急な坂や狭い道などバスの入りにくい場所があった。市のアンケートでは「自宅からバス停までが遠い」と答えた人は30・8%に上った。ワゴンはこういった既存の交通網から漏れた場所への運行を可能にする。今後高齢化が進めば、ますますの役目が高まると考えられ、令和3年度の本格導入を目指す。

 また、大阪府四條畷市の一部地域では今年4月、コミュニティーバスを4人乗りタクシー車両を活用したデマンド運行に変更した。電話やファクスで予約すると、大人220円、子供110円で路線内の各停留所間を移動できる。

 導入前は36人乗りのバスが走っていたが、利用者の伸び悩みから1、2人しか乗っていないことも。住民からは「空気を運んでいる」と揶揄(やゆ)されることもあったというが、予約制に移行したことでコスト削減できるようになった。運行事業者の日本タクシーの担当者は「採算は度外視している。地域のみなさんの利便性を保つことが第一だとお受けした」という。

 異なるライフスタイル

 都市の規模や立地によって住民の足を支える公共サービスのあり方は異なる。新井准教授は「公共交通のあり方は現時点で大きく4つに分けることができる」と指摘する。

 大阪市などの大都市では、鉄道や地下鉄、路線バスなどが住民の足の中心。また、高槻市など都市部を囲むベッドタウン化した郊外では、路線バスが中心になる。中山間地になると限定された本数の乗り合いバスなど公共交通がぐっと少なくなり、さらに限界集落に近いような地域は公共交通機能がほとんどない空白地域が多い。

 ただ、今はベッドタウンで路線バスなどが充実している地域でも、このまま少子高齢化が進み、利用者数が減ることになれば数十年後には公共の足の確保が困難になる可能性もある。

 国土交通省によると、平成30年度の路線バスなどの乗り合いバス事業は民営では約7割、公営は約95%が赤字。利用者も昭和40年代のピーク時の100億人超から半減している。また平成14年にバス事業の参入退出の規制緩和が行われたことから、民間のバス事業者が不採算路線から撤退するケースも増えている。

 新井准教授は「民間バスが撤退した空白をうめるために、個別のニーズに応じて小さな規模で運営できるデマンド型交通の需要はさらに高まるだろう」と予想している。