アパレル縫製大手が疲労回復ウエア差別化奏功 「医療」アピールし第3弾も投入

 
16日から販売する夏用ルームウエア
リカバリーウエアへの本格参入を表明し、「リフランス」ブランドのパジャマを紹介する小島衣料の石黒崇社長(右)=2019年8月27日

 睡眠不足に悩む「不眠大国ニッポン」で、着るだけで疲労回復や安眠を促すと期待される疲労回復ウエア(リカバリーウエア)の愛用者が増えている。女性用アパレル縫製の国内大手、小島衣料(岐阜市)も市場の成長性に注目し、2018年に「リフランス」ブランドを立ち上げて参入。一般医療機器としてアピールする差別化戦略が奏功し、売り上げを伸ばしてきた。16日から第3弾として夏用ルームウエア3種類を投入し、リフランスとして初めて年1万着の販売を目指す。

 安眠導く夏用3種類

 発売する夏用ウエアは水分を吸収・乾燥させやすい天竺編みのTシャツとタンクトップ、吸水性の高いパイル地のパンツの3種類。価格は6600円から。夏向けの「コンフォート」シリーズとして新たに展開、初年度は年間1400着の販売を見込む。

 綿100%の生地に、シリカやトルマリンなど7種の天然鉱石をコーティング(含浸)。それらが発する微弱な遠赤外線が、自律神経の中でもリラックス状態に働く副交感神経に作用。筋肉の緊張をほぐし、血流を促し、疲労回復や安眠に導くという。

 同社がリカバリーウエアに着目したのは17年3月。眠りに悩んでいた石黒崇社長が生地の展示会で、血行促進、疲労回復、老化防止をうたう、天然鉱石を配合した繊維に出合った。

 生地を腕に掛けると「何でこうなるの?」と驚くほど、血流が明らかに良くなり、この繊維でパジャマを作れば睡眠不足が解消されると考えた。「学会発表などで科学的根拠がしっかりしており、他の先行商品と比べ勝ち目がある」と判断、リカバリーウエアでは珍しい一般医療機器として売り出すことを決めた。

 厚生労働省が行った17年の調査で、20歳以上の「睡眠で休養が十分に取れていない者の割合」は20.2%に達し、09年から増加傾向にある。リカバリーウエアは運動後に着用することで血流を促し安眠を誘うと支持され、休息時や睡眠時にも着用されるようになった。利用者はアスリートから社会人、主婦、高齢者と拡大。それに併せてベンチャーや大手スポーツメーカー、流通などから参入が相次いでいる。

 外出時にも着られる

 小島衣料は後発ながら、18年1月に安眠や疲労回復を促す「一般医療機器パジャマ」としてテスト販売。綿100%の天然素材、おしゃれなデザインも受け、2万円と高額ながら1年で1000着を売り上げた。購入者へのアンケートでも「試すと眠りの悩みが全て解消された」「一度着るとほかでは眠れない」と回答があった。

 手応えを得た石黒氏は本格参入にかじを切り、19年9月にニットやTシャツなど5アイテムを商品化。就寝時(パジャマ)に加え、休養時(ルームウエア)の利用シーンを新たに提案。アパレルメーカーならではのデザイン力を生かし、ちょっとした外出時にも着られる“ワンマイルウエア”とアピール。20年2月期は前期比約3倍の3090着を販売し、第3弾の市場投入に弾みをつけた。石黒氏は「まだまだ少ない。リカバリーウエアは健康に寄与できる。アイテムを増やしながら日本のメジャーになる」と意気込む。