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公共事業中断要請 下請けへのしわ寄せ対策必要
公共事業の中断申し出が増え始めたのは、在宅勤務になじまず、感染防止策は限界があるためだ。工期が遅れないよう継続している企業もあるが「国が中止を呼び掛けてほしい」との声も。中断した場合、追加費用について立場の弱い下請け企業にしわ寄せがいかないよう対策も必要だ。
ゼネコン大手の清水建設は、緊急事態宣言対象の7都府県で工事を全て止める。東京都内の作業所に勤務していた男性社員が死亡後、新型コロナウイルス感染が判明したためだ。
西松建設も7都府県で実施中の工事は発注者と協議の上、中断する方針を決めた。「社員や協力会社の安全と健康を考慮した」(担当者)という。東急建設も、原則工事を中断する方針だ。
ただ、工事を続けている企業も多い。鹿島は「発注者の指示があれば中断するが、それまでは最大限の備えで感染を防止する」と説明。現場に入る前の検温、作業員の朝礼を分散して行うなどの対応を徹底している。
継続の背景には業界特有の構造もあるようだ。土木工事は下請けや孫請け会社に日当で雇われている人が多く、中断すると作業員の収入がゼロになる。ドミノ倒しのように工期が遅延すれば、人手が確保できず、新たな工事の受注が難しくなる。ある会社関係者は「国が積極的に工事中止を呼び掛けないと企業の判断だけでは踏み切れない」と漏らす。
国直轄事業の場合、中断による追加費用は国が支払う方向だが、受注企業も一定の負担を求められる可能性がある。この場合、経営基盤が弱い下請け企業が不利益を被ることも想定され国は「元請けと下請けの間の取引の適正化について、より一層徹底に努める」(赤羽一嘉国土交通相)としている。