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町工場が新型コロナでの出勤削減に困惑 政府の支援策は要請厳しく

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が大阪府をはじめ対象地域の事業者に出勤を最低7割減らすよう要請したが、「ものづくりの町」東大阪市の町工場には困惑が広がっている。感染を拡大させたくないものの、製造業を在宅で行うのは不可能だからだ。すでに町工場の経営は苦しく、政府が打ち出した給付金などの支援策も、スピード感に欠けるとの批判がある。

東大阪市の町工場にも新型コロナウイルスの逆風が吹き付けている(イメージ)
東大阪市の町工場にも、新型コロナウイルスの逆風が吹き付けている(イメージ)

 訪問営業お断り

 東大阪市には平成28年現在で約6千の事業所がある。政令市を除けば市町村で全国トップとなっている。

 「家には機械を持って帰れない。出勤を止められるのは、オフィスワークだけだ。われわれも、事務スタッフの態勢なら対応できるのだが」

 出勤の削減についてこう話すのは、プラスチック製品の金型部品などをつくるチャンピオンコーポレーションの担当者だ。

 感染拡大を防ぐ観点では、取引先の約2割からも訪問営業を断られているという。

 「わわわれはオーダーメードで製品を作っており、日ごろの取引先との関係づくりが大切だ。そのためには、実際に顔を合わせることが重要なのだが」

 売り上げ半減

 防火シャッターなどの部品を製造する自営業、福冨明さん(70)は、「元請けメーカーなどからの発注が減り、仕事を抑えざるをえなくなっている」と話す。

 従業員は息子とベトナム人男性の2人だが、残業などはさせていない。

 福冨さんは「売り上げは半分近くまで減った。5、6月にはゼロになるのでは」と不安を口にする。旋盤の購入で府から融資を受けており、月30万円の返済もしなければならない。

 「新型コロナがいつ収まるかわからない。収束しても、世界経済に悪影響が広がっており、製造業は立ち直れないのでは」。福冨さんはこう語る。

 資金繰り相談相次ぐ

 東大阪商工会議所が2月に会員対象に行った調査では、新型コロナの影響を指摘する回答は、すでに8割に上っていた。

 商議所には資金繰りに関する相談が多く寄せられ、中には、産業展示会の中止で、足場を組む仕事のなくなった建設業者からのものもあった。政府が3月に打ち出した、日本政策金融公庫などを通じた実質無利子・無担保の融資に関する問い合わせは今月10日時点で57件に。商議所の関係者は、「ほかの融資などに関してのものと合わせると、とても多くの相談が寄せられている」としている。

 この無利子・無担保融資は、売上高が前年より20%以上減った中小企業などに対し、当初3年間、払った利子を補填(ほてん)する制度だ。さらに、政府が今月7日まとめた緊急経済対策に、中小企業で最大200万円、個人事業主で同100万円を配る給付金制度を盛り込んだ。前年より50%以上、売上高が減っていることなどが要件となっている。

 ただ、無利子・無担保融資は申請用の書類が多く、手間かかるとの指摘も。関西経済同友会の池田博之代表幹事は「作成などに多くの時間を費やさざるを得ない」としている。

 給付金も、始まるのは早くて5月中とスピード感に欠ける。業者からは「収入減など要件が厳しく、簡単に給付金を受けられないのでは」(東大阪市の福冨さん)との懸念も上がっている。