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タンパク質は大豆から 「植物生まれの食」が花盛り

 芽吹きの季節を迎え、食の世界では「植物性」をうたった食品や飲料が花盛りだ。筋肉づくりだけでなく、健康と美容に欠かせないタンパク質の注目は動物性から植物性へ。「畑の肉」と呼ばれる大豆がさまざまに形を変え、“植物性シフト”を担っている。(榊聡美)

 おからも入れて

 豆乳を使った植物性ヨーグルトが少しずつ種類を増やす中、大豆を丸ごと原料にしたヨーグルトがお目見えした。

 フジッコの「大豆で作ったヨーグルト」は、豆乳では取り除かれるおからも入っているのが特徴。食物繊維やミネラルなど、大豆の栄養と独特の風味を余さずヨーグルトにするため、6年かけて開発した。

 大豆を微粉末にして液状にし、乳酸菌を添加して発酵させる。「こだわったのは、とろっとした滑らかな食感と自然な大豆の風味。さまざまな品種の大豆と乳酸菌の組み合わせや製法に試行錯誤を重ねました」と、同社ヨーグルト・デザート事業部の敷田加寿美さんは明かす。

 酸味は穏やかで、大豆の風味・香りがしっかりと感じられる。豆腐と同じ感覚でワサビやショウガを利かせたしょうゆをかけて和食のようにも味わえ、これまでのヨーグルトとは違った楽しみ方ができる。

 おやつで手軽に

 果実、野菜に大豆をおからまで丸ごと使ってブレンドした新飲料が「野菜生活ソイプラス」(カゴメ)。フルーティーな甘みで豆乳が苦手な人でも飲みやすいと好評とか。20~30代の女性を中心にリピーターを増やしている。

 1本に60グラムの野菜を使用し、野菜の栄養と植物性タンパク質、食物繊維、イソフラボンなどが一緒に取れる。

 若い女性の間では、体づくりや美容のためにタンパク質を取りたい、というニーズが高まっているが、野菜摂取や栄養バランスなどを併せた効率性を求める傾向も強いという。

 ギンビスは、半世紀以上のロングセラーを続ける人気ビスケット、アスパラガスに大豆プロテインを配合した「アスパラガス プロテイン」を発売。1袋(135グラム)に約15グラムのタンパク質が含まれている。

 「大豆プロテインはゆっくりと吸収されるため腹持ちがよいとされ、必須アミノ酸のバランスがよいタンパク質といわれています」(同社広報担当)

 50代以上の中高年層に向けて、おやつで手軽にタンパク質を取ってもらえるように商品化したという。

 ロングセラーも

 一方、こんなおなじみの味に今春、「植物生まれ」がラインアップに加わった。

 アサヒ飲料は、豆乳を発酵した「グリーン カルピス」を新発売。トレードマークの水玉模様はよく見ると大豆に。30年以上にわたり発酵の研究を重ねて、豆乳を原料にしながらも伝統あるカルピスならではの味わいを実現させた。牛乳を使った従来のカルピスに比べて甘さもカロリーも控えめだ。

 牛乳、卵といった動物由来の原料を使用せずにつくられた「植物生まれのプッチンプリン」(江崎グリコ)は、豆乳とアーモンドペーストを合わせてコクのある味わいに仕上げた。

 「アレルギーがある子供も一緒に食べられるようになって喜んでいます」。同社には、母親からの声が多く寄せられているという。

 動物・植物「1対1に」 管理栄養士・赤石定典さん

 「理想的なタンパク質の取り方は動物性・植物性が1対1。現代の食事は動物性、特に肉に偏っているので、豆腐や納豆以外に植物性タンパク質が取れる食品が広がるのは食事の質向上につながります」と、東京慈恵会医大病院栄養部の管理栄養士、赤石定典さんは説明する。

 フレイル(要介護になる手前の虚弱状態)を予防する観点から、最新の「日本人の食事摂取基準」では50歳以上の摂取目標量の下限が引き上げられた。「新型コロナウイルス感染の予防で家に閉じ籠もる生活が続くと筋肉が衰えてしまう。高齢者は意識してバランスよくタンパク質を取り、家事に精を出すなど体を動かしてほしい」