自動車減産で下請け悲鳴 従業員賃金激減「生活もたない」

 
トヨタ自動車九州の宮田工場。新型コロナウイルスの影響で基幹産業の自動車は大きな打撃を受けている=4月25日、福岡県宮若市

 新型コロナウイルスの感染拡大による部品調達や販売の不振を受け、自動車大手各社は全国の工場で減産に踏み切った。生産台数は大きく減少。影響は下請けの中小企業で働く従業員に広がり、月収が6割以下に減る恐れも。「長引けば生活がもたない」と悲鳴が上がる。

 トヨタ自動車や日産自動車が拠点工場を構える福岡県。「工場が止まれば給料は出ない」と、1次下請けの部品工場で働く男性(40)は話す。大手の一時帰休に連動し、4月は半分が休みに。勤務先は休業手当で基本給の9割を払うが、夜勤や残業がなく実際の収入減は1割以上。5月の勤務も半分になるという。

 「2月の休みは数日で、新型肺炎は人ごとだった。影響は4月にがつんと来た」と振り返る。減産方針は続くとみられるが「大手からの通告はいつも突然だ。そのたびに下請けは振り回される」。経営基盤が弱い下請けは、予定外の在庫を抱えれば資金難に陥るのも早く、連鎖を懸念する。

 「これでは厳しい」。2次下請けの部品工場で働く男性(42)が漏らす。勤務先が示した4月の休業手当の補償割合が6割だったからだ。普段の月収は深夜手当や残業代込みで約36万円。手当も減るため、6割では20万円に満たない。税金やローン、子どもの習い事は月計約13万円。残る6万円ほどで食費や光熱費を賄えるのか。

 若手は手取りが11万円に減り「退職金で家族を養う」と口にする人も。男性は「こうしたことで自動車業界の将来に不安を感じるのでは」と話す。例年の賃上げ幅は下請けほど小さくなる暗黙のルールがあり、補償割合もこれにならったように見える。賃金差は構造的に縮まらない。

 政府は雇用を維持する企業への助成金を拡充し、勤務先は4月の補償割合を引き上げた。しかし、5月も7日間休むよう求めてきた。「先の補償は分からない。6月もこの状態かもしれないし」