オンライン面接での見極め方 発言促す質問で熱量・合致度を把握
採用面接がオンラインで実施されるようになった。オンラインツールの導入当初は、使いこなすだけで精いっぱいだったかもしれないが、面接を重ねるにつれ、オンライン面接ならではのノウハウがないことに気づく人が増えた。緊急事態宣言の終わりが見えない中、オンライン面接を活用するレベルにとどまらず、面接効果を高めるレベルに、チャレンジする人が増えている。(山口博)
そんな人たちからは、「対面に比べて、オンライン面接は、採用候補者の熱量が伝わらない」「自社の企業文化に合致しているかどうか、オンライン面接だと自信がない」という相談を受けている。これらの問題に対して、実は、とても簡単で、すぐに実施できて、ある程度効果が見込める対処方法がある。
採用候補者の熱量を読み取る方法だが、実は面接する側の発言が、気づかぬうちにそれを阻害してしまっていることが多い。答えが限定される「Aですか?Bですか?」という限定質問よりも、答えが限定されず拡大していく可能性のある「~について工夫したことをどんなことでも挙げてください」という拡大質問の方が、候補者の熱量を測りやすい。
数人と同時に面接する場合に、無意識のうちに、「では、はじめにAさん発言してください」「次はBさん発言してください」というように、よかれと思って発言者を指名したり、順番を指図したりしてしまう人が多い。あえて、指名も指図もせずに、「話したい方から話してください」と促せば、熱量の一部である行動の能動性や迅速性は測れる。逆は謙譲性や慎重性だ。
面接する側が質問して答えるだけでなく、採用候補者に対して「他に質問はありませんか」「言いたいことがあれば遠慮なく言ってください」と促すだけで、思考の能動性や迅速性が分かる。
オンライン面接の場合、説明の順番や返答の内容というような、より単純で単独で発揮されやすいスキルが強調され、声や表情や体の動きを合わせた表現力というような、複雑で組み合わせて発揮されやすいスキルが目立たないという特徴がある。言い換えれば、オンラインでは、パーツスキルは強調されやすいので、候補者の発言や表情を分解して捉えれば、スキルの程度は見極めやすいといえる。オンライン面接は個別スキルを見極めることに向いている。
オンラインでのスキルの見極め方は、個別スキルが強調される分、見極めは容易になる。面接する側の質問の意図を理解した返答かどうかで、理解力の高さが測れる。質問に正確に答えたかどうかで正確性が分かる。意外な答えが返ってくるかどうか意外性が探れるのだ。
自社の企業文化に合致しているかどうかも、その部分に分解して質問を組み立てれば、オンラインの方が対面より見極めが容易になる。一人で取り組んで成果を挙げた話をした候補者に、他のメンバーと協力して取り組んだ事例を挙げてもらう。一人の取り組みと共同での取り組みとどちらに腐心して話すかで、牽引(けんいん)志向か調和志向かを見極める方法だ。自社の企業文化がチャレンジやイノベーションを志向しているのであれば、牽引志向の高い人が合致しているだろうし、連携やバランスを志向しているのであれば調和志向の人が企業文化に合っているといえる。
これらはいずれも、一つ一つの見極め結果には誤差はあるが、いくつかの返答結果を積み重ねると誤差は減少し、その人本来の地の姿が見えてくる。
【プロフィル】山口博
やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国大非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。