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アフターコロナのビジネスは? 共存見据えた事業戦略続々と

 新型コロナウイルスの感染拡大で今後もウイルスとの共存が予想されるなか、関西の機械メーカーが「アフターコロナ」を見据えた事業戦略を次々に打ち出している。分析装置を活用した感染症対策、「空気ビジネス」の強化、遠隔医療サービスなど、強みを生かした事業に取り組む。(山本考志)

島津製作所が生産を急ぐ回診用X線撮影装置。肺炎検査向けに需要が高騰している(同社提供)
スマートフォンを活用して病院に解析結果を送信するオムロンのモバイル心電計(同社提供)

 島津製作所は20日に発表した令和4年度までの3カ年中期経営計画で、緊急重要課題として「感染症対策プロジェクトの推進」を掲げた。

 プロジェクトは上田輝久社長の呼びかけで4月中旬に発足。大学や医療機関と連携した新型コロナなどの感染防止システムの構築に取り組む。具体的には、院内感染の原因となるウイルスを特定する分析装置を開発。関連機器もネットワーク化し、感染症の特徴や傾向をデータで把握するシステムをつくる。

 同社は、病室や集中治療室での肺炎検査が可能な回診用X線撮影装置の生産台数を前年比で2倍に増やすなど、新型コロナへの対応を急いでいる。上田社長は「感染症は社会課題として深刻な問題と改めて認識した。いろんな技術を持つ会社として仕組みづくりを提案したい」と話す。

 新型コロナの感染拡大で換気や空間除菌などへの関心が高まる中、ダイキン工業は空気清浄機などの売り込みに注力する。空気清浄機の需要増を受け中国の生産委託先をフル稼働させるほか、マレーシアに生産ラインを新設。国内生産も検討する。

 また、病院やデータセンターなど清浄な空間が求められる施設で、空気の分析や遠隔監視、気流の可視化などが求められると見込み、空調のアフターメンテナンスでの清掃・除菌ビジネスも視野に入れる。

 十河政則社長は5月12日の決算説明会で「安全安心への関心の高まりが全世界で起きている」とし「どう優先順位をつけて人材の獲得、研究開発、設備投資を実行していくか。手の打ち方でライバルとの競争力に差が付く」と指摘する。

 体温計の需要が増加しているオムロンが「アフターコロナ」の世界に備えるのが、遠隔医療サービスや生産現場での省人化だ。

 平成29年の米アライブコア社との資本・業務提携で取り扱いを始めた、スマートフォンなどを活用したモバイル心電計のグローバル販売を強化。患者が自宅で測定した心電図などのデータの解析結果を病院に送信し、心臓疾患などの早期発見・治療に役立てるサービスで、遠隔での患者管理が可能になるため、院内感染の拡大防止につながるとする。

 また、新型コロナ禍では、工場の稼働を停止したり、出勤する従業員数を制限したりするケースも相次いだ。その解決策として生産ラインの自動化、省人化が求められており、同社が手がけるもう一つの主力事業であるファクトリーオートメーション機器に商機があると見込む。

 山田義仁社長は、人と同じ空間でも安全に作業できる同社の「協調ロボット」が貢献するとし、「コロナショック後に加速する新たな成長機会をとらえる準備ができている」とした。

 各社とも得意分野で新たなビジネスチャンスを切り開く考えだが、新型コロナによる業績の悪化が陰を落とす。

 オムロンは今年度の業績予想の公表を見送るなど「新型コロナの影響で受注が弱含みで、この状況がいつまで続くか見通すことは難しい」と厳しい経営が続く。ダイキンでは中国でのサプライチェーン寸断で一時的に生産が停滞するなど、生産、開発面でも影響は残る。

 「(コロナ禍は)移動ができない点が厳しい。製品の運搬や打ち合わせがやりにくく、事業活動が停滞している」(島津製作所・上田社長)。新ビジネス強化の鍵は、コロナショックからのいち早い脱却が鍵を握っているといえそうだ。