埼玉りそな銀、「寄付」で医療支援 福岡聡社長インタビュー
埼玉りそな銀行の福岡聡社長が産経新聞のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、寄付を通じて埼玉県内の医療支援に乗り出す方針を明らかにした。脆弱(ぜいじゃく)性が指摘される県の医療水準の底上げを図る。感染収束後の「新常態(ニューノーマル)」を見据えた経営のあり方の模索を急ぐ姿勢も示した。
福岡社長によると、寄付型私募債「新型コロナ医療支援ファンド」の取り扱いを5日に始める。
医療従事者や医療機関の活動の支援に充て、取り扱い総額は100億円となる。企業が発行する私募債を同行が引き受け、発行額の0・2%分を手数料から負担し、県の「新型コロナウイルス感染症対策推進基金」に寄付する。
福岡社長は「県の医療体制の充実は喫緊の課題だ。事業者も地元への貢献ができる」と強調した。
投資信託で収益の一部を寄付に充てる仕組みも検討し、医療関連団体への寄付を想定して夏ごろにサービスを始める方向という。
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--感染拡大の影響をどうみるか
「経済活動が止まり消費行動や働き方も変わった。いくらか再開はしているが、しばらくは7割運転ぐらいの状況だ。県内経済への影響はストレスとしてたまり、時間が伸びている」
--積極的な資金繰り支援に乗り出している
「県信用保証協会を通じた融資申し込みのうち約2千件の約500億円を実行した。協会を挟まない融資枠などで800億円程度対応している。融資手続きのスピードを上げるための体制も整えた」
--感染の流行を受けて展開する商品はあるか
「6月に寄付型私募債の『新型コロナ医療支援ファンド』を立ち上げる。県の医療体制の充実は喫緊の課題。事業者も間接的に地元貢献ができる。投資信託の収益から寄付するような仕組みの商品も考えている」
--令和4年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画がスタートした
「ポイントの一つは豊かな未来づくりのサポート。高齢化や資産・事業の承継にどう対応していくかだ。3月に信託業務の兼営認可を取得しており、遺言信託業務などを強化したい」
--その他には
「デジタル化をどう推進するかだ。キャッシュレスやグループアプリの取り組みで、社会変革がもたらす便益を届ける。あとは持続可能な社会づくり。地域協働型ビジネスの創出を通じて地域経済活性化を図る」
--地方銀行の再編についてどう考えるか
「県内では武蔵野銀行が千葉県の千葉銀行と提携関係にある。千葉銀行は神奈川県の横浜銀行と提携し、われわれも横浜銀行と海外で一緒にやっている。再編の動きで重視すべきことは、金融インフラ安定化の観点ではないか。いまや一企業でどうにかできるレベルを超えた社会的課題が生じている」
--「新常態」にどう向き合うか
「コロナはデジタル化やグローバル化の流れを一気に繰り上げた。事業継続計画見直しなどの問題も提起した。新しい変化に企業や個人がどう備えるか、将来への提案が必要だ。『今を乗り切り、いい形で将来につなぐ』。この2つの目線で顧客と共鳴していく」(中村智隆)