大豊建設・大隅健一社長(2-1) 2つの特殊技術でインフラ支える
1949年の創業以来、大豊建設は「信頼に応える確かな技術」をモットーに、橋梁(きょうりょう)やトンネルといった社会インフラの整備を担ってきた。特許を取得した特殊技術は建設業界の発展に寄与、「技術の大豊」は確固たる地位と信頼を築いた。今年度からの3カ年計画では100年企業に向けて、土木と建築の2本柱を伸ばしながら新事業に参入。そのために必要な人材育成にも力を入れる。大隅健一社長は「特殊技術に強みを持ちながら小回りが利き、社会から必要とされる会社になる」と言い切る。
土木・建築が両輪
--昨年3月に70周年を迎えた
「私が入社した74年当時、土木の売り上げ(完成工事高)が350億~400億円、建築が40億~50億円と売上高の8~9割を土木が占める会社だった。しかし、事業の柱が1本では厳しいと判断し建築にも注力し、土木と肩を並べるまでに成長した。今やイーブンで、まさに車の両輪だ。それに伴い利益を出せる体質になった」
「リーマン・ショックに襲われた2010年3月期(連結)の売上高1209億円、売上総利益70億円から、20年3月期は売上高1628億円、売上総利益144億円と増加した。利益率は5.8%から8.9%に上昇し、売上総利益は2倍に膨らんだ。同業他社より脆弱(ぜいじゃく)だった技量が10年で大きく向上した」
--その要因は
「創業から一貫して技術力を第一に考え、『大豊式ニューマチックケーソン工法(特許取得1951年)』や『泥土加圧シールド工法(同84年)』など業界を牽引(けんいん)する画期的な技術を開発してきたからだ。今でも世界で使われている技術で、大きなプロジェクトには声をかけてもらっており、ジョイントベンチャー(JV)で参加する機会が多い。この2大特殊技術、いわば二枚看板で事業を組み立てる戦略を取ることで、『技術の大豊』のブランドを確立することができた」
--どんな技術なのか
「ニューマチックケーソン工法は風呂の浴槽に湯桶を逆さまにして平らに水中に押し込むと空気の圧力により水の侵入を防ぐという原理を応用。下部に作業室を設けた鉄筋コンクリート製の二重スラブ構造の箱(ケーソン)を地上で造り、作業室には地下水圧に見合う空気(ニューマチック)を送ることで水を排除して掘削作業を行う。ケーソンを地上で造るので作業条件が良くなり品質も向上する。93年に開通した東京港連絡橋『レインボーブリッジ』を支持し安定させている橋梁基礎は同工法で施工された。鉄道や道路の橋梁などインフラ整備に欠かせない」
--泥土加圧シールド工法は
「前面にカッターを備えた円筒形の機械で地中を掘りながらその後ろでブロックを組み立てることを繰り返してトンネルを造っていく。土圧や水圧が伴う都心のトンネル工事に最適で、技術の進歩により大口径も掘れるようになった。以前は下水道工事が主流だったが、今では大規模な環状道路工事でも多く採用されている。リニア中央新幹線の第一首都圏トンネル(北品川工区、シールドマシン外径約14メートル)にJV構成員として参加している」
ゲリラ豪雨に対応
--近年の異常気象でニーズが高まった
「これら特殊技術はゲリラ豪雨などの異常気象に対応する地下貯留施設の建設などに不可欠として注目されている。『バケツをひっくり返したような雨』といわれる1時間降水量50ミリを超す雨は、1980~84年の年平均発生回数213日から2015~19年には331日と5割強増えた。都市部ではこうした集中豪雨に道路舗装も加わり、雨水処理能力が追いつかない。浸水対策としての地下空間利用、しかも大深度化、大断面化ニーズに応えるには立て坑を掘って地下に構造物を造るニューマチックケーソン工法が適する」
100年企業へ新事業育成の種まき
--20~22年度の中期経営計画を策定した
「20年は100年企業を目指し新たな企業価値を創造する出発の年と位置付け、22年度に売上高2000億円を目指す。自然災害の増加や人口減少・成熟社会の到来を見据え、既存の土木と建築をメインに、新たな事業を育てるとともに種をまく。既存事業を伸ばすため二枚看板を生かして防災・減災事業を拡充する。非住宅事業も強化し、物流施設や工場、公共建築物に注力する」
「新事業への対応としては維持修繕事業、首都圏事業、CLT(板材を直角に交わるよう積層接着した木質構造)事業・不動産事業を育てる。そのためには資本提携やM&A(企業の合併・買収)も視野に入れる。CLTについては3月に開設した技術研究所(茨城県阿見町)で新しい木質材の活用と耐震壁などの構造研究に取り組み、多様な建築物に展開したい。将来の布石としてPPP(官民連携)などに取り組む。売り上げ目標2000億円のうち10~20%は新規事業で賄いたい」
マダガスカルで実績
--海外展開は
「マダガスカルと台湾、アジア・アフリカなどのODAを中心に実績がある国・地域を軸に展開している。台湾では現在、シールド工法による地下鉄工事を2カ所で施工中だ。台北市と高雄市を結ぶ全長345キロの台湾高速鉄道のうち『C220』工区約18キロの橋梁、トンネルなどの土木工事を担当したほか、『S220』工区の新竹駅舎などの建設を請け負った。一方、マダガスカルではトアマシナ港拡張工事とアロチャ湖灌漑(かんがい)システム改修工事を行っている。1977年のナモロナ水力発電所建設以来、一度も撤退することなくインフラ整備に貢献してきた」
「これが認められて2009年完成のエホアラ港は同国の高額紙幣の絵柄に採用されたほか、国家勲章も2度授与。創業者の内田弘四も表彰され、これを機に工学系学生向け奨学金制度を創設し、70周年の昨年には制度を拡充した。19年8月に横浜市で開催されたアフリカ開発会議に出席するため来日した同国大統領からインフラ整備への協力を求められ、今後も積極的に貢献することを約束した」
--新型コロナウイルス感染拡大の影響が心配だ
「新型コロナの影響は2~3年続くだろう。収束が見えない中で世界的に経済活動が縮小・減退し、国内経済にも不透明感が強まり、民間設備投資は厳しい状況が続くとみている。社内の働き方だが、在宅勤務や時差出勤に切り替えられる部署は継続的に実施していく。工事現場では毎日の検温など体調管理の徹底に取り組み、3密(密閉・密集・密接)にならないよう指導していく」
次代背負う人材育成
--100年企業のイメージは
「2つの特殊技術に強みを持ちながら、小回りが利く企業、社会から必要とされ、役に立つ企業を目指す。さらに若い社員が夢を持てる企業でありたい。そのためには風通しが良い社内環境をつくり、社員一人一人の働きがいに寄り添い、誰もが挑戦し活躍できるようにしたい。本社もリニューアルでIT環境を整備し、働き方も効率化できるように変えた」
「技術に立脚し、技術に裏打ちされた企業としてスタートしており、特殊技術の深化と進化による技術伝承と、この技術を使いこなせる技術者を育てる。会社は人材が全てであり、人材育成に最も力を入れる。茨城県阿見町に技術研究所を開設したのもそのためだ」
--次代を背負う人材の獲得は
「70周年を機に、知名度向上に向け広報活動に力を注いだ。そのかいあって今年4月には53人を採用することができた。例年は40人前後なので効果があったといえる。しかもベトナム人男性(土木技術者)、ミャンマー人女性(建築技術者)を採用できた。外国人の新卒採用は初めて。ベトナム人男性は『(大豊は)高度の技術力を持っている。働きながら技術力を向上させ社会インフラ整備に貢献したい』と、ミャンマー人女性は『現場監督に興味がある。若手に責任ある仕事を任せてくれると聞いてこの会社で働きたいと思った』と入社理由を話した。2人とも『将来は海外拠点で働きたい』と意欲的なので、非常に頼もしい」
【プロフィル】大隅健一
おおすみ・けんいち 宇都宮大学農学部卒。1974年大豊建設入社。2008年執行役員、10年取締役常務執行役員、同専務執行役員、同執行役員副社長などを経て17年代表取締役執行役員社長。68歳。埼玉県出身。