パイフォトニクス 池田貴裕社長 独自性持つ光技術で差別化を
圧倒的な明るさや高い視認性を持つ産業向けLED照明製品などで独自色を打ち出すパイフォトニクス。池田貴裕社長(45)は、営業体制なども強化し、早期上場に向けて前進する。(那須慎一)
--なぜ起業したか。また企業理念は
「浜松ホトニクスへの入社時から抱いていた『自分自身の研究成果を自らの手で事業化したい』という思いを実現するために光産業創成大学院大学へ入学しました。当社の共通となる価値観は『融合』です。『人にやさしい光技術を融合した製品の提供を通じて、人と社会のネットワークを融合し、新しい地球の未来を拓(ひら)く』ことを理念としています」
--現在注力している事業内容や主なターゲットは
「主力製品である光パターン形成LED照明『ホロライト・シリーズ』の新しい光の使い方を追求しています。この製品は遠方に鮮明な光のラインを作ることができます。この製品とIoT(モノのインターネット)を活用したデジタル情報とを融合することにより、スマート工場に新しい価値観を提供していきます。ユーザーと感動できる新しい空間を共有することにより新しい価値を共創したいです」
--今に至るご苦労や思いは
「起業当初は一人会社で、資本金は100万円。しかも製品もない。細胞を見るための顕微鏡で起業しましたが、起業半年間の売上高はゼロ。絶望の中、できないと言わずにやってみろの精神で第一歩を踏み出しました。起業1年後にホロライトを考案し、この光には何か役立つことがあると事業転換しました。10年の年月が経過して華が開きました」
--足元の課題は
「今まで私が全ての業務を見てきましたが、これからは各部長に任せていけるような組織づくりと人材教育を行いたいと思います。新しい光技術を提供し続けるための研究開発は必須です。このため、当社ホロライトビル3階をリフォームしてラボスペースを開設します。また、昨年、営業職を3人採用して小さな組織ができました。今後、成長に向けて営業職などを増員していきたいと思います」
--新たに取り組みたい事業・開発案件、ご自身の短期・中期の目標は
「スマート工場に関する製品開発と実用化をはじめ、浜松駅前で医療従事者などへの感謝を示すために行った『アリガトウ・ライトアップ』などエンタメ要素のある取り組みも横展開を図っていきます。2~3年後を目途に、社内基幹システムの導入や営業体制の構築、経営面で私の右腕、左腕になってくれる人材の登用などを進め、事業が多角化して上場を目指すことができる段階を指す『レイターステージ』への移行を図ります。長期的には、令和7年の上場を目標とし、遅くとも12年には上場を果たしたいと思います」
--コロナ後の状況をどうみるか
「展示会の出展機会がなくなり、人との出会いが減っており、プロモーションをどうするかは課題です。ただ、ベンチャーにとってはチャンスが多く、本当に良いものが生き残っていくと考えています」
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■会社概要
・所在地 浜松市東区天王町673ホロライトビル
・設立年月日 平成18年10月2日
・主な事業内容 光パターン形成LED照明「ホロライト・シリーズ」の製造販売
・従業員数 32人(令和2年6月現在)
・資本金 8840万円(同)
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・いけだ・たかひろ
・生年月日 昭和50年6月27日
・出身地 和歌山県有田郡広川町
・最終学歴 光産業創成大学院大学博士課程修了(光産業創成学位取得)
・主な職歴 平成12年、浜松ホトニクスに入社し中央研究所に配属。16年、米マサチューセッツ工科大に派遣。18年光産業創成大学院大学博士後期課程入学。大学院在学中の同年10月、パイフォトニクスを設立し、現在に至る。
・主な受賞歴など ニッポン新事業創出大賞経済産業大臣賞、静岡県ニュービジネス協議会静岡県知事賞など
趣味など オーディオ、自動車、パソコン。特技は暗算。