中小9割超がコロナ悪影響
日本・東京商工会議所労働委員会委員長 塚本隆史氏に聞く
新型コロナウイルスの感染拡大で、大手企業がテレワークを日常化するなど働き方改革を加速させている。一方、国内企業数の99.7%を占める中小企業はどういう状況にあるのか。日本・東京商工会議所労働委員会委員長の塚本隆史氏(みずほフィナンシャルグループ名誉顧問)に聞いた。
--中小企業の現況は
「日本商工会議所が全国の会員企業の経営者を対象に実施している商工会議所LOBO(早期景気観測)調査によると、6月の全業種の業況DI(判断指数)はマイナス62.8。1月はマイナス26.8だったので、極めて低い数字だ。コロナによる経営への影響については、既に影響が出ている企業と、長引けば影響が出ると懸念される企業を合わせて93%に上る」
「一方、従業員の人員整理を検討、あるいは実施した企業は3.9%と驚くほど低い。極めて厳しい経営環境の中で、経営者は事業の存続と雇用の維持のために、ぎりぎりの努力をしている。ただ、もともと中小企業は経営者の高齢化と後継者難が課題だっただけに、コロナ禍がきっかけとなって、経営者の心が折れ、廃業する企業が増えるのではないかと危惧している」
--昨年4月から働き方改革関連法が順次施行された
「5月に全国の中小企業を訪問調査したところ、有給休暇の取得義務化については10%、時間外労働の上限規制については18.5%の企業で対応のめどがついていない。来年4月施行の同一労働同一賃金に至っては、めどがついている企業は46.7%と半分以下だ。商工会議所としては、厚生労働省が各都道府県の労働局に設置している『働き方改革推進支援センター』の活用を会員に呼び掛けるとともに、オンラインセミナーなどを通じて理解促進に努めていく」
--テレワークの導入は進んでいるのか
「東京商工会議所の会員(東京23区)に対し、6月に緊急アンケートをしたところ、テレワークの実施率は67.3%と3月時点の26%から急上昇した。この上昇分の過半は政府の緊急事態宣言発令(4月7日)以降の導入だ。ただ、全国の調査では15.1%なので、まだまだの地域が多い」
--中小企業が生き残るには生産性向上が不可欠だ
「生産性向上にはコスト削減と売上高総利益率向上という2つの要素がある。コスト削減にはITを活用して業務効率を高める必要があり、東商も導入を支援している。一方、利益率を向上するには、コストをいかに適正に価格に転嫁できるかにかかっている。中小企業庁が大企業と中堅・中小企業がお互いに取引価格の公正化、適正化に取り組むことを促すために、7月から『パートナーシップ構築宣言』をした企業を公表する仕組みを作った。この動きが広がることを期待したい」(随時掲載)