インタビュー

個人経営は秋以降に倒産加速の恐れ 今後想定されるリスク要因

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員・小林真一郎さんに聞く

 --緊急事態宣言は解除されたが、新型コロナウイルスの感染再拡大が続く。足元と今後の景気見通しは

 「4~6月期の国内総生産(GDP)は年率20%超のマイナス成長になる。瞬間風速ではリーマン・ショック時(2009年1~3月期)の17.8%減を超え、相当大きなショックだったと改めて確認されるだろう。ただ、これは過去の話だ。景気の底は5月ごろにつけ、7~9月期にはプラス成長に復帰する。ただ最悪期からの反動の勢いは8月以降に一服し、感染拡大防止と経済活動のバランスをとることで景気回復のペースは鈍ってくる」

※画像はイメージです(Getty Images)

 --今後想定されるリスク要因は

 「3つ心配な点がある。1つ目は海外経済の動向だ。ブラジルやインドなどの新興国に加え米国でも感染が拡大し、経済そのものが悪化する。2つ目は国内の感染拡大で緊急事態宣言が再発令されること。前回のように全国が対象ではなく地域を限定したり、自粛要請にとどまったりするかもしれないが、経済活動は制約される。3つ目は景気低迷が長引いて企業倒産や失業が増え、(感染収束後も)経済活動が元に戻らなくなることだ」

 --倒産と失業はこれから深刻さを増す恐れがある

 「企業は(実質無利子・無担保融資などの政府支援策で)資金繰りの面倒をみてもらえても、返さなければいけない借金がどんどん膨らむ。売り上げが立って返済のめどがつくなら借金もするが、返す当てのない借金は増やせない。中小、特に個人経営の企業は秋以降に我慢し切れなくなり、倒産が加速する可能性がある」

 --政府はどのように対応すべきか

 「今年度で既に2回実施した補正予算はかなり大がかりで規模的には十分だ。今後は問題の長期化を見据えて、宿泊業、飲食サービス業、インバウンド関連産業など支援が必要な業種へ手厚く対策を検討すべきだ」

【プロフィル】小林真一郎(こばやし・しんいちろう) 一橋大卒、1990年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行。99年三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。現在は国内経済統括を担当。広島県出身。