変革 コロナ危機

金剛峯寺は遠方信者向け護摩祈願 門前町が生き残りへ試行錯誤

 「こんな状況は初めて。今はなじみの客からの注文で何とか食いつないでいる」。世界遺産・高野山(和歌山県高野町)で数珠などを扱う土産店店主は国内外の参拝客が消えた門前の光景に落胆の声を漏らした。新型コロナウイルスは空前のにぎわいを見せていた関西の宗教関連施設にも影を落としている。

 高野山の寺院、周辺の宿泊施設、土産物店などにとって通常の夏は書き入れ時となる。弘法大師空海が今も瞑想(めいそう)を続けているという奥之院の御廟を詣でようと、熱心な信者が訪れて多額の浄財を寄せる。もともとは僧侶や参拝者の宿泊施設だった宿坊は特に外国人に人気で、朝のお勤めや精進料理の体験ができる。そうした中で周辺の土産物屋も恩恵を受けてきた。ただ今年はコロナ禍で一変。門前町の経済は苦境にあえいでいる。

 「緊急事態宣言の直後は大打撃だった」。高野山真言宗総本山・金剛峯寺の山口文章山林部長はこう振り返る。寺院の運営費や人件費などは浄財で支えられており、一時は危機的状況に陥ったという。

 「宗教も新しい手法を活用しないと立ち行かなくなる」。山口氏は聖地の神秘性を維持しつつ、コロナ禍の生き残り策を探ることも大切だと訴える。5月には遠方に住む信者向けに護摩祈願ができる取り組みを始め、全国から約9000件の申し込みを集めるなど試行錯誤を続けている。

 古都・京都も観光客激減に苦悩する。特に外国人を照準にしたゲストハウスは資金力に乏しく、倒産が相次いでいる。京都市によると5月は54軒、6月は72軒の簡易宿泊施設が廃業した。

 こうした中でコロナ禍でも頑張って営業を続けようと模索する動きも出始めた。「FUJITAYA BnB」(京都市)はどこからでも京都の旅行気分が楽しめる「オンライン宿泊」を開催。運営会社の藤田勝光社長は「コロナ収束後は日本人客にも来てもらえるようPRしたい」と意気込む。「ゲストハウス 京都コンパス」(京都市)は事業継続の運営資金を募るクラウドファンディングを開始。返礼として2年後まで有効な「未来宿泊券」を付け、今後の巻き返しを目指す。

 コロナの逆風はなお強く、企業や地域を取り巻く環境は厳しい。それでも、危機の中から立ち上がろうと、変革への手探りが続く。