訪日客消滅の大阪・ミナミ、地価爆騰から一転下落 コロナの影響色濃く
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、インバウンド(訪日外国人客)需要に支えられ上昇を続けていた関西の地価にかげりがみえている。9月29日発表の基準地価で、大阪圏は昨年4地点がランクインした全国商業地の価格変動率上位トップ10から姿を消した。インバウンドの恩恵が特に大きく、昨年は価格、上昇率ともに圏内トップだった大阪・ミナミの中心部が下落に転じ、上昇幅縮小にとどまったキタに逆転を許した。地価にもコロナの影響が色濃く反映され始めている。(黒川信雄)
客足3割まで減少
「人通りが回復しない。非常事態だ」
インバウンドに人気だったミナミの観光スポット・道頓堀の商店街関係者は、客足の低迷が続く現状に焦燥感をあらわにする。コロナによるインバウンド消滅で今春以降、商店街は厳しい打撃を受けた。その後、感染者数減少とともに国内客が回復し、「6月ごろには前年の6割ぐらいまで戻り、明るい兆しも見えていた」(同関係者)という。
しかし7月以降に感染が再拡大。8月には大阪府がミナミの一部エリアの店舗に営業時間短縮や休業要請をしたことで再び客足が3割程度にまで減少。休業要請解除後も国内客が回復しない状況が続いている。
兆円投資で底堅く
昨年に価格が前年比45・2%上昇し、上昇率で全国3位に入ったミナミの住友商事心斎橋ビル(大阪市中央区)は、今年は一転して4・5%の下落。高額賃料で出店していたドラッグストアの休業などが相次ぎ、「もうける力がそげ落ちた」(不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールの山口武リサーチディレクター)格好だ。
一方、オフィス街でもあるキタのグランフロント大阪(同市北区)は8・8%増(昨年は34%増)となり、3年ぶりに大阪圏の価格首位に返り咲いた。山口氏は「キタはJR大阪駅の大規模改修や周辺商業地の再開発など、これまでに兆円単位でインフラ投資が進められてきたことから、企業の進出意欲が依然強い」と分析する。
同じくオフィス需要が高いJR新大阪駅に隣接する新大阪第一生命ビルディングも14・6%増で大阪圏の上昇率トップとなり、ミナミと明暗がわかれることになった。
京都のブランド力健在
自治体別では、昨年13・1%だった大阪市の商業地の平均の地価上昇率は2・6%にとどまった。インバウンド消滅でホテルなどが厳しい打撃を受ける京都市も上昇率が昨年の11・5%から1・4%に縮小した。ただ、同市はホテル需要は落ち込んでいるものの、「京都という高いブランド力を背景に、マンション用地などとして不動産開発業者が引き続き土地の取得を狙っている」(不動産経済研究所の笹原雪恵大阪事務所長)状況という。
奈良市も昨年の4・4%から1・3%に縮小。ただ、奈良は「大阪や京都と違ってこれまでインバウンド需要を十分に取り込めていなかったことが逆に幸いした」(笹原氏)ことで、上昇率の下落幅は大阪や京都より小さかった。