金融

苛烈な金利競争、有望な貸出先も“奪い合い” 多すぎる「地銀」に再編機運

 【経済#word】

 「地方の銀行は数が多すぎる」-。菅義偉(すがよしひで)首相のひと声で、地方銀行の再編機運が一気に高まっている。「オーバーバンキング」と呼ばれるこの現象は、地銀を苛烈な金利競争へと走らせ、じわじわと体力を奪ってきた。背景には、少子高齢化やカネ余りといった構造問題がある。新型コロナウイルスの感染拡大で多くの中小・零細企業や個人が痛手を負う中、地方経済を下支えする役割が期待される地銀にとって、収益力の向上は一刻を争う課題だ。

 地銀の経営は厳しさを増している。三菱UFJモルガン・スタンレー証券によると、上場地銀78社の令和2年4~6月期決算は、最終利益の合計が前年同期比42%減の2006億円。福島銀行(福島県)と百十四銀行(香川県)の2行は最終赤字に転落した。

 銀行は預金者に利息を払って資金を集め、そこから企業や個人に貸し出して利息を受け取っている。伝統的な収益の源泉である預貸の金利差「利ざや」は縮小傾向が続く。

 帝国データバンクによると、2年3月期は全国の地銀102行のうち70行で利ざやが前期比で減少した。カネ余りが続いていることに加え、少子高齢化や人口減少を背景に、数少ない有望な貸出先を奪い合っているためだ。新たな貸出先を求め、都市部に攻勢をかける地銀も相次ぐ。

 来年2月で導入から5年を迎える日本銀行のマイナス金利政策も地銀の経営を圧迫する。

 「従来型の預貸を中心とした銀行業務についてはオーバーバンキングだ」。全国地方銀行協会の大矢恭好会長(横浜銀行頭取)はこう述べ、収益の大半を貸し出しに依存する伝統的なビジネスモデルを改めない限り、地銀は苦境から脱することはできないとの考えを示す。

 秋田県出身の菅首相は地方創生への思い入れが強い。再編でオーバーバンキングを解消し、地銀が元気を取り戻すことができれば、地方経済活性化への第一歩となる。金融庁もこうした考えの下、地銀再編を後押ししてきた。

 今月1日には、長崎県を地盤とする十八銀行と親和銀行が合併し、十八親和銀行が誕生。来年1月には、新潟県の第四銀行と北越銀行が合併して第四北越銀行が、5月には三重県の三重銀行と第三銀行が合併して三十三銀行が発足する。

 だが、実際は地銀再編の足取りは非常にゆっくりとしている。過去10年間で減った地銀の数は5行にとどまる。

 ネックとなっているのが、独占禁止法だ。地銀同士が合併すれば、地域の貸し出しシェアは高くなる。平成28年には、十八銀と親和銀の統合計画に対し、公正取引委員会が待ったをかけたこともあった。

 こうした経緯も踏まえ、政府は今年5月、合併の制限を緩和する特例法を成立させた。11月に施行される。

 特例法適用の「第1号」として有力視されるのが、青森市に本店を置く青森銀行とみちのく銀行だ。両行は昨年10月、包括的な提携検討で合意。今年7月からはATM(現金自動預払機)の相互開放を始めた。両行が一緒になれば、総資産が5兆円を超える大型の銀行グループとなる。

 ただ、経営統合や合併を実現するには、理念や企業風土が合わなければ話が進まない。労力も経済的コストもかかるため、簡単な話ではない。

 地銀協の大矢氏も地銀が生き残るには、「再編だけが唯一の方法ではない。何を実現するかが大事だ」と強調する。

 現実に昨年来、目立っているのは異業種との連携だ。

 SBIホールディングスは「第4のメガバンク構想」を掲げ、地銀4行と資本提携した。SBIの北尾吉孝最高経営責任者(CEO)は「リージョナルな(地域の)銀行からナショナルな(国の)銀行に転換したらどうか」と述べるなど、地銀再編に意欲的だ。

 野村証券は山陰合同銀行(島根県)、阿波銀行(徳島県)と相次いで包括提携した。

 これらの提携は地銀にとって、大手に後れを取ってきたデジタル戦略の推進につながるほか、商品ラインアップの充実や顧客基盤の強化につながる。

 「これまでと違った経営努力をしてもらわないといけない」。麻生太郎財務相兼金融担当相はこう述べ、地銀に対してハッパをかけた。

 日本銀行は平成29年10月に公表した「金融システムリポート」で、金融機関の店舗数に関する国際比較を行っている。人口当たりの比較では、日本は25店と、主要国でトップのスペインの4割弱。米国の7割程度にとどまる。

 ただ、全国約2万4千カ所にある郵便局を含めると、日本の人口当たり店舗数は44店となる。「オーバーバンキング」が指摘されるドイツとほぼ同じ水準だ。

 一方、可住地面積当たりの店舗数を比較すると、日本は突出して多い。日銀は「狭い国土に銀行店舗が密集することで、預金獲得競争が激しくなった。預金関連手数料を課すことを前提としないビジネスモデルが定着していった」と分析している。(経済本部 米沢文)