IT

コロナでウェブ講演会好調 AIにも注力 木村情報技術・木村隆夫社長

 人工知能(AI)サービスを展開する木村情報技術(佐賀市)は、2021年6月期の売り上げ目標を当初の48億円から63億8000万円に引き上げた。新型コロナウイルスの感染拡大でイベントが会場からオンライン開催に移行していることで、主力のウェブ講演会運営・配信サービス「3eLive」が好調なため。AI事業でも新製品の投入効果を見込む。木村隆夫社長に今後の展開などを聞いた。

売り上げ目標上げ

 --20年6月期の業績は

 「売上高は42億1200万円(前期比30%増)だった。内訳は、だれでも(Everyone)、どこでも(Everywhere)、いつでも(Everytime)をコンセプトに『3e Service』として展開しているイベント事業が36億8700万円と前期比27%増加した。AIを活用したAI事業『AI Service』が5億2400万円で55%増だった。しかし、もっと大きく伸びると想定していたので、低迷といわざるを得ない」

 --今期の売り上げ目標を引き上げた理由は

 「イベント事業の売り上げは当初、38億2000万円(4%増)と見込んでいたが、コロナ禍により会場での開催予定をオンラインに切り替える動きが活発化。このため3eLiveの依頼が増加しており、売り上げ目標を54億円(47%増)に引き上げた。担当者の増員や機材などの追加発注のほか、スタジオ(インターネットテレビ局)を東京・日本橋に2カ所増設し11月にオープンする。これで6カ所体制になるが、それでも対応できない状況だ」

 --AI事業は

 「9億6000万円(83%増)に据え置いたが、AI市場の拡大を見込んで新たなサービスを提供していく。問い合わせに対しAIが対応するチャットボット『AI-Q』に加え、昨年12月にチャットボットと検索型AIを組み合わせたハイブリッドシステム『AI-Brid』を発売。製造業を中心に採用に向けて商談が進んでおり順調だ。今期は30社に採用され売り上げが3億円に達するとみている」

 「9月発売のオンラインセールスシステム『Chat Meet』も好評で、導入を決めた企業も出てきた。自社製品・サービスについて当初はAIチャットボットが質問などに対応。詳しい内容を聞きたいという購入見込み客には有人によるチャットやオンライン商談に移行し顧客獲得につなげる。コロナ禍で訪問機会が減少し新規案件獲得が難しいという悩みを解消できると評価された。今期は5億円の売り上げを見込む」

販促機会減少を解消

 --さらにAI市場を攻める

 「10月から法人ライブ配信サービスの提供を始めた。3eLiveは主に製薬企業の講演会や医薬品のプロモーションに特化したサービスで、製薬企業の要望に合わせて詳細にわたり特別にカスタマイズされている。このサービスを元に、新たに法人ライブ配信用として展開する。コロナ禍で十分なプロモーションを行えない自動車や建設業界などが興味を示している。こうした新サービスの提供開始で来期のAI事業の売り上げを15億円に伸ばす」

 --なぜ相次いで新サービスを提供できるのか

 「社員375人のうちAI事業に関わる人員は119人。このうちAIチャットボットなどの質疑応答システムを作成・運用・コンサルティングできる要員を増やしてきたからだ。『運用(メンテナンス)が大変』『導入しても業務の実情に合わないためすぐに使えない』といった声に47人体制で応えている。これが他社にない強みだ」(松岡健夫)

【プロフィル】木村隆夫

 きむら・たかお 星薬科大学薬学部卒。1987年山之内製薬(現アステラス製薬)入社。2005年木村情報技術設立し社長。東京都出身。57歳。

【会社概要】

 ▽本社=佐賀市卸本町6-1

 ▽設立=2005年7月29日

 ▽資本金=5000万円

 ▽従業員数=375人

 ▽事業内容=人工知能(AI)活用事業・AIサービスの研究開発など