ドローン宅配便と空飛ぶクルマ
22年に法改正、実用化へ膨らむ期待
新型コロナウイルスの影響でリモートワークなどの新しい働き方が広まる中で、世界中でドローンへの期待はさらに膨らんでいる。米アマゾン・コムは8月末、米連邦航空局(FAA)に申請していた商用配送サービス「プライムエア」の商用利用が許可され、「Part135の航空運送業者認証」を取得した。
これでアマゾンはドローンを使って自宅の玄関前まで荷物を運ぶ「ドローン宅配便」を試験プログラム下で開始することができるようになる。既に米グーグルの持ち株会社であるアルファベット傘下のウイング・アビエーションやアメリカ郵便公社(UPS)傘下のフライト・ホワードがFAAから航空運送業者認証を受けており、アマゾンはこれらに続く3番目の企業となる。
ただ2013年から商用ドローンによる配達サービスの実用化に取り組み、英国では30分以内に荷物を配送するパイロットプログラムを実施、19年6月には米国でドローンの試験を行うための許可をFAAから取得していた。アマゾンが航空運送業者認証を取得し本格参入することでドローンによる物流の動きが世界中で加速することは言うまでもない。
さらにモノだけではなく“ヒト”の移動にもドローンが深くかかわるようになった。米ウーバー・テクノロジーズは23年の実用化を目指して「空飛ぶタクシー」網構想を進めている。
「空飛ぶクルマ」の開発は日本でも急ピッチで進んでいる。今年1月にはウーバーと提携関係にある米スタートアップ、ジョビー・アビエーションとトヨタ自動車が提携。脱自動車製造の道を歩み始めた。スバルも空飛ぶクルマに注目し、米国で電機飛行機の開発を進めているバイ・エアロスペースに出資している。大手企業だけではない。スカイリンクテクノロジーズ(神戸市)が日本最大のドローン展示会「ジャパン・ドローン2020」に「パーソナル・プレーン・開発・プロジェクト(P.P.K.R)」の模型を展示した。
P.P.K.Rは最大800キロを2時間でカバーする移動手段で、ヘリコプターでは実現できなかった山越えルートなども可能にする。本州四国なら2時間、北海道最北端の宗谷岬なら3時間で移動でき、ユーザーはアプリで機体を手配し、地図をタップするだけで目的地まで全自動で運行できる仕組みになっているという。25年には4人乗りの機体の完成を目指している。
しかし日本でドローンがモノやヒトの輸送で活躍できるようになるのか。東京大学未来ビジョン研究センター特任教授で、日本UAS産業振興協議会理事長の鈴木真二氏は次のように語る。
「ドローンはようやく世界中で実装化されるようになってきた。日本でも物流、農業利用、点検、監視の分野で実証実験が行われている。ただ人の上を自由に飛ぶことができないため現状では許可申請を出して実証試験を行っている。しかし22年には航空法が改正され、有人地帯の目視外飛行なども可能になるので、本格的な実用化はそれを待ってということになる」。ドローンでモノやヒトが移動する時代ももうそこまで来ているようだ。
【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』など多数。埼玉県出身。