高論卓説

悩み相談の上手な聞き方 カウンセラーも使う「積極的傾聴」重要

 警察庁発表の統計によると10月の自殺者数は全国で2153人となり、前年同月比で4カ月連続増えている。自殺増加の背景には新型コロナウイルスと関連する要因がありそうだが、自殺のリスクを高める要因は複数あり、年齢が高くなるほど複雑になる傾向がある。

 ここ数カ月、恵まれた環境にいるはずの芸能人自殺のニュースに、「一体、なぜ」と不思議に思った人も少なくないだろう。それほど悩んでいるなら誰かに相談できなかったのか、と思う人もいるかもしれない。しかし、自殺を選択する人は、問題を「自分のせいだ」と考え、一人で何とかしようと頑張る傾向があるものだ。

 責任感があるからそうなるとも言えるが、つらいときには援助を求めることも必要だろう。つらい気持ちの背景に鬱病などがある場合は、視野が狭くなり、周囲に助けを求めることを迷惑や無責任、恥などと考え、援助を求める能力(援助希求能力)が低下していることがある。自身の経験から、「誰も自分を助けられない」と思い込んでいることもある。

 不安を抱えた今の社会では、私たちは援助希求能力を高めていかねばならない。同時に、援助を求められる可能性がある人は、相談されたときの対応スキルを高めることも必要となる。

 適切な話の聞き方は意外と知られておらず、相談の内容や頻度によっては、相談にのった方が疲弊してしまうことがある。そこで、私たちカウンセラーが最初に習う相談対応時の話の聞き方である「積極的傾聴」について、そのポイントをお伝えしたい。

 米国の心理学者カール・ロジャーズによって提唱された「積極的傾聴」は、話を聞く側には次の3つの要素が必要であると説いている。

 (1)自己一致(聞き手が、相手に対しても自分に対しても、真摯(しんし)な態度でいること)。話を聞いて分からないことがあれば、そのままにせず相手に確認する。一区切りついたところで「あなたが伝えたいことはこういうことか」などと確認してみるのも良い。

 (2)共感的理解(相手の気持ちに寄り添い、相手の立場に立って話を理解すること)。相手の話に「悲しかった」といった感情を表す言葉がでたら、感情を込めて「悲しかったのですね」と繰り返すことで共感している姿勢を示す。ここでの注意点は、「実は私も」などと自分の話を持ち出して相手が話すチャンスを奪ったりしないことである。

 (3)無条件の肯定的配慮(自分の物差しで相手の話を否定したりせず、そのように考えるようになった背景に肯定的な関心を持って話を聞く)。自分の価値観はいったん横に置いた上で、相手に教えてもらう姿勢を意識して話を聞く。

 共感的理解を意識しながら聞くことは大切だが、一緒に落ち込まないようにしたい。一緒に落ち込んでしまうのは同情や同感であって、共感とは違うものである。

 また、話を聞く時間は、お互いが疲れずに集中力を維持できる40~60分程度に設定し、相談者にはあらかじめその旨を伝えた上で相談をスタートするとお互いが安心できる。聞くことだけで問題を解決できないと感じたときは、相手を心配しているが自分ではこれ以上力になれないことをきちんと伝え、しかるべき相談機関を紹介することも必要となる。積極的傾聴を心掛けることで、構えずに相談を受けることができるようになるだろう。

 舟木彩乃(ふなき・あやの) ヒューマン・ケア科学博士。メンタルシンクタンク副社長。筑波大大学院博士課程修了。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)がある。千葉県出身。