ベンチャーに活躍の場提供 三井不動産が共創拠点相次ぎ開設
三井不動産がベンチャー企業との共創拠点を相次いで立ち上げている。今月9日に東京・日本橋にライフサイエンスと宇宙をテーマにした拠点を開設したのに続き、来年1月4日には千葉県柏市柏の葉地区にある「柏の葉オープンイノベーションラボ(KOIL)」の2棟目「KOILテラス」が完成。新しい技術やアイデアを持つベンチャー企業を誘致、活躍の場を提供することで、新産業創出の触媒役を果たす。
産業創出の仕掛け
16日に報道公開された「KOILテラス」には、入居企業の従業員が自由に使えるコワーキングスペース(200席)を用意。KOILで産声を上げたスタートアップ企業が成長したときの受け皿となるよう、貸しオフィスを1棟目のときよりも広めにした。
KOILは2014年4月に開設し、ベンチャー企業を含む約40社が入居している。東京と茨城県つくば市のちょうど中間に位置する柏市柏の葉地区には、東京大学や国立がん研究センター東病院、千葉県の中小企業支援施設「東葛テクノプラザ」などの研究機関が進出。高度な技術に裏打ちされた研究成果が数多く生まれている。
これらの研究成果を社会に広く還元させるためには、「大手企業や起業家、投資家など、さまざまな人が集まれるような場や仕掛けが必要」(三井不動産柏の葉街づくり推進部)と考えた。
一方、三井グループ創業の地である東京・日本橋。この地には大手製薬会社が集積していることから14年、ライフサイエンス分野に特化した事業共創拠点を開設。大学などの研究機関、ベンチャーキャピタル(VC)、ベンチャーを支える企業や団体も含め既に約130の企業や団体が入居した。9日には10カ所目の拠点を新設した。
また、三井不動産が18年12月、宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)に出資したのをきっかけに、宇宙分野の事業共創拠点「クロス・ニホンバシ」も開設。スペースBD(同区)など宇宙ベンチャーも集まり始めている。9日に開設した新拠点「クロス・ニホンバシタワー」には、ispace(アイスペース、東京都港区)が22年に打ち上げる月着陸船の管制室を設けた。
モビリティーに注目
三井不動産はベンチャー企業の誘致だけにとどまらない。ライフサイエンス、宇宙に続いてモビリティーにも注目。千葉・柏の葉や東京・日本橋のマンションを舞台に、フィンランドのベンチャー企業と組んで、公共交通機関とシェアサイクルやカーシェアリングとを組み合わせた移動方法を入居者に提案する実証実験を始めた。
一方、ライフサイエンスや宇宙に関するイベントやセミナー、シンポジウムなども、日本橋で数多く開催。内容も子供向けからビジネス、研究者向けまで多彩だ。
人が集まり、新たな考えに触発され、次の新しいビジネスにつなげる。三井不動産が手掛ける拠点は、組織の枠を超えた事業共創を意味する「オープンイノベーション」と、その先にある新産業創出の起爆剤となっている。(松村信仁)