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飲食店時短で農漁業に打撃 ハーブやカニ、高級食材の発注激減と価格下落

 関西3府県などで再発令された緊急事態宣言により、時短営業要請を受けた飲食店以外にも影響が及んでいる。飲食店に食材を提供する農業や漁業といった第1次産業もその一つ。とりわけ料亭やレストランが扱う高級品への打撃が大きく、生産者は危機感を募らせている。

 「飲食店からの定期的な発注はすべてなくなった」。宣言対象地域外の奈良県葛城市で、フランス料理などに添える小さな野菜「マイクロベジタブル」や食べられる花「エディブルフラワー」、ハーブの生産・販売を行う「寺田農園」の寺田昌史さん(52)はため息をつく。

 主な出荷先は、大阪の高級レストラン。ハーブなどは一般家庭で扱われにくい食材のため、前回宣言時と同様に売り上げは激減し、1月は例年の3分の2まで落ち込むと予測している。「それでも、作物の世話や畑の維持管理、従業員の賃金も必要だ…」。水道・電気代などの固定費で月に約300万円はかかるため、不安がよぎる。

 奈良の県産ブランド「大和牛」や「大和肉鶏」にも影響が出始めた。県の担当者は「高級品や珍しい品は都市部で消費される傾向が高く、大打撃」と話す。

 海の幸も、ズワイガニやアカアマダイといった、主に料亭向けの高級魚介類を中心に価格が上がらない。日本海に面した京都府北部では、昨年1キロ1500円前後だった寒ブリが今年は半値ほどまで落ち込んだ。漁業者には大きな痛手だ。

 卸売業者の「大阪北部中央青果」によると、刺し身料理を彩る菊花や大葉といった「つまもの」の価格低下も顕著という。メロンなど高級果物も大きく価格を下げており、別の業者の担当者は「廃業を決める生産者もいる」と明かした。

 柿生産量全国1位の和歌山県が、約10年がかりで開発した高級柿の新品種「紀州てまり」は、販路開拓の出ばなをくじかれた。昨秋、東京の百貨店向けに初出荷。伊勢丹新宿店では1個600円以上で販売されたが、出荷できたのは10、11月の2回のみで、消費者向けの試食会も開けなかったという。

 栽培農家でつくる「柿消費拡大対策事業協議会」の村田昌隆会長は「新しい食べ物は試食で味わってもらうことが肝心なだけに、痛かった」と嘆く。

 主産地を抱えるJA紀北かわかみでは、「巣ごもり需要」を見据えたネット販売も検討。村田会長は「家庭用にも幅を広げて販売していきたい」と語った。

 緊急事態宣言再発令で、政府は食品供給を支える第一次産業の生産者を支援する最大40万円の一時金を支給する方針だが、専門家は事業規模に合わせた持続的な支援が必要だと訴える。

 生産者支援では、月の売り上げが前年同月に比べて50%以上減ったことなどを条件に、最大200万円を支給する国の持続化給付金がある。ただ食品の流通に詳しい日本総合研究所の石田健太マネジャーは、生産量など「規模が大きいところにより多くの支援が必要だ」と指摘する。

 今回の宣言再発令に伴い、政府は時短要請に応じた飲食店の取引先である生産者に最大40万円(個人事業主には最大20万円)を新たに支給する方針を示す。

 しかし、売り上げや出荷が減っても生産者は作物などの維持管理に肥料や餌代、人件費がかかる。収束の見通しが立たないなか石田氏は「影響が長引けば、安定的な食品供給のためにも一時的ではなく継続的な支援が求められる」と話した。(田中一毅、井上裕貴、山田淳史、前原彩希)