高論卓説

窮地の飲食店を救え デジタル陰性証明書使い時短解除提案

 政府が新型コロナウイルスの感染拡大抑止に手を焼いている。緊急事態宣言の解除からわずか1カ月で「蔓延(まんえん)防止等重点措置」が適用された大阪府のように、飲食店への営業時間短縮要請だけでは感染の波を抑え込むのが困難なことが明白になった。

 この拡大傾向が全国に波及し、感染拡大の「第4波」が本格的に到来すれば、サービス産業の雇用悪化をトリガー(引き金)に日本経済が「二番底」に落ち込みかねない。

 政府にとって、大阪府が3月1日の宣言解除から1カ月で重点措置の適用に至ったことは予想外だったのではないか。もし、重点措置の適用対象が拡大し、さらに3回目の緊急事態宣言に直面すれば、対面型ビジネスを中心にした日本の非製造業は、経営が悪化する企業が連鎖的に増加する公算が大きい。この分野は多くの雇用を抱えている産業でもあり、一段と雇用環境が悪化しかねない。

 日本銀行が今月1日に発表した3月短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス5と2019年9月以来の水準に回復。非製造業もマイナス1と前回から4ポイント改善した。しかし、コロナの第4波が本格的に到来し、大型連休の頃に感染者が急増する事態になれば、非製造業は再びDIが悪化するリスクがある。

 感染者増-行動規制の強化-感染者減-規制の緩和-感染者増というサイクルを昨年春から繰り返してきたように思えてならない。社会的距離の保持やマスク着用、飲食店の時短という既存の対策では、感染の波の繰り返しを抑止することはできないのではないか。

 筆者がその思いを強くしたのが、3月30日に厚生労働省が発表した新型コロナの抗体検査の結果を見てからだった。

 5都府県で昨年12月に検査したが、東京都では陽性率が1.35%だった。約1400万人の都の人口から換算すると、約18万人の陽性者がいたと推計できる。同時期の東京都での陽性者の数は約5万人だったので、実際の陽性者は3.6倍の規模で存在していたことになる。

 この捕捉されていない陽性者の存在を把握しないまま、飲食店の時短やマスク着用などで対応しても、抜本的な解決にはつながらず、新型コロナのワクチンの普及までは流行の波が繰り返し到来する。

 正常な経済活動に戻れないまま、輸出依存の「一本足打法」を続けていると、日本経済の疲弊がさらに進み、内需が決定的な打撃を受ける事態を招くことになりかねない。

 そこで感染症の専門家が提唱している検査の拡大をさらに推し進め、希望する国民全員にPCR検査を安価で受けさせる仕組みを作り、陰性証明をデジタル化して「PCRパスポート」を交付するシステムの導入を提案したい。

 パスポートを店頭にあるチェッカーで確認し、安全な客だけを対象にできる飲食店への時短を解除すれば、事態は大きく転換するのではないか。

 現在のような一律の時短要請は、新型コロナの所在を確認しないままの対応であり、夏の浜辺のスイカ割りのイメージがつきまとう。PCRパスポートの導入には、実現には多くのハードルが存在するだろう。だが、国民に「厭戦(えんせん)気分」が広がり始めている今、菅義偉首相には新しい対応策にチャレンジしてほしい。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。