福島の新鮮魚介にほれ込み、新メニュー提供 都内の人気パエリア店
東京・虎ノ門のスペイン料理のパエリア店「エルトラゴン」では、「常磐もの」と呼ばれる福島県産の魚介を使ったオリジナルメニューを提供している。東日本大震災から10年を迎えた同県の漁業・水産業の復興応援が目的。昨年11月と今年3月に開かれたイベント「ジャパン フィッシャーマンズ フェスティバル 発見!ふくしまお魚まつり by デリバリー&テイクアウト」(主催・同実行委員会)から派生した企画の第2弾で、東京都台東区の中華料理店「馥香(フーシャン)」に続き、今度はスペイン料理で福島の魚介が味わえる。
「スペイン料理は調理方法がシンプルで、素材の良さをそのまま生かしたメニューが多い。福島の魚介はとにかく素材として素晴らしいので、本当においしいメニューができた」
エルトラゴンのオーナーシェフ、栗原靖武さんは、新メニューの味に太鼓判を押す。
栗原さんはパエリアの本場であるスペインのバレンシア地方で修業し、パエリアの国際コンクールで入賞した実績を持つ。同店はまきで炊くパエリアが売り物の人気店だ。
新型コロナウイルスの感染防止に配慮した新しい形の食フェスとして昨年11月に第1回を開催したイベントでは、「常磐もの」を代表するアナゴを使った「ふわふわアナゴのパエリア」のレシピを考案。3月の第2回では、自ら調理に腕を振るった。これを機会に、福島の魚介を使ったオリジナルメニューを考案し提供することにした。
現在、提供している魚介メニューは、「ホッキ貝とズワイガニのパエリア」と「シラウオのアヒージョ」の2品。このほか、福島のブランド牛肉を使った「福島牛のロースト 黒ニンニクソース」もメニューに加えた。また、福島の魚介を使ったお取り寄せ用の冷凍商品「常磐ものパエリア」を開発し、ネット通販で販売する予定だ。
常磐もののホッキ貝は身がプリプリとして甘みが濃いのが特徴。シラウオは漁獲されたその日のうちに瞬間冷凍し産地で食べるのと変わらない鮮度が自慢だ。
「うちのパエリアはエビをベースにした濃厚なスープで炊いているが、それに負けない貝の味わいが楽しめる。シラウオはアヒージョにすると身が崩れてしまうものが少なくないが、一匹一匹がしっかりとしていて、かみしめると口の中にうま味があふれる」
栗原さんも、福島の魚介にすっかりほれ込んだようだ。
福島県の沿岸漁業は3月に日数や時間を制限した試験操業を終え、本格操業に向け徐々に水揚げ量を増やしていく移行期に入ったが、政府が東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を決定。風評対策と消費・販路拡大が課題となっている。
「福島には本当においしい魚がとれる豊かな海があるのだから、それをしっかり供給できるようにしてほしい。料理人としてはせっかくの海の恵みを大切に使い、一人でも多くの人に食べてもらいたい」
栗原さんは、今後も福島の魚介をできるだけ使っていきたいという。
【エルトラゴン】
▽所在地 東京都港区西新橋2の13の8 広瀬ビル1階
▽電話 03・6268・8636