スポーツbiz

コロナ禍でボートレースが好況の理由は 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 西日本が例年より早く梅雨入り、今週中には関東も続くという。新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言下、より閉塞(へいそく)感が募る。長雨で複合災害が起きれば、もはや「東京2020大会開催」どころではない。

 モヤモヤをスポーツで吹き飛ばしたい。しかし行動が制限され、プロ野球やJリーグなども入場者数に制限がかかる。そんななか、公営ギャンブルの業績伸長が目を引いた。

 ◆売り上げ2兆円台に

 日本中央競馬会(JRA)の2020年決算では、勝馬投票券収入と事業収入を合わせた事業収益は前年より884億円伸ばして3兆207億円。17年ぶりの3兆円台を回復した。昨年は約7カ月半にわたる無観客開催で、入場者数が前年比84.1%減の99万人と落ち込んだ。ところが電話・インターネット投票会員が大幅に増えて売り上げ増に貢献、コロナ禍の影響を払拭したという。さらに海外競馬の勝馬投票券発売も3兆円回復の要因となった。

 今年は1月こそもたついたが2月以降は上昇基調。GIレースでは大阪杯の前年比35.5%増の162億7858万円をはじめ、皐月賞が24.7%増の191億7266万円、天皇賞12.0%増の188億9902万円と好調を維持する。

 “好況”は中央競馬だけにとどまらない。地方競馬の20年度の売り上げは前年比30%増の9122億円で、1991年度以来29年ぶりに9000億円台を回復した。競輪は同じく13.6%増の7499億円、オートレースも28.1%増の946億円。コロナ禍による巣ごもり需要も手伝い売り上げを伸ばした。

 中でも著しい売り上げ増を記録したのが、ボートレースである。前年比35.7%増の2兆951億円は92年度以来28年ぶりの2兆円台回復となった。

 今季も好調を維持、というよりも、さらに上昇気流に乗っている。SGのボートレースクラシックは前年比91.8%増の131億2750万円を売り上げ、プレミアムGIのマスターズも91.0%増の103億977万円である。

 ◆イメージ払拭に注力

 ボートレースも他の公営ギャンブルと同様、コロナ禍での巣ごもり需要の好影響を受けるが実はそれだけではない。10年越しの取り組みの結実である。

 10年前の2010年の売り上げは8400億円と低迷していた。危機感を持ったボートレース界は「おっさんのギャンブル」というイメージの払拭から着手。若年層やファミリー層に浸透するべく、「競艇」から「ボートレース」に表記を変更した。

 旬のタレントを使ったテレビCMを積極的に放映し、レース場を大幅にリニューアルした。女性や子供たちが安心して立ち寄れるようトイレの改革など、全国のレース場を美しく作り替えた。そして他に先駆けた電話・インターネット投票の導入である。いつでも、どこでも投票できる仕組みはファン層を拡大した。平日も開催している強みに加え、早朝やナイターレースも実施。選手の人気投票は活気をもたらし、開催レース場地元への貢献は底辺を拡大していった。

 振興会、競走会に選手会の意識の共有に加え、施行者である地方自治体と一体となった取り組みこそ現在の好況の要因である。逆境のときは何をすればいいのか。10年先を見据えたボートレースの取り組みは、コロナ禍での対応を教えてくれる。

                  ◇

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。共著には『これからのスポーツガバナンス』(創文企画)、『スポーツフロンティアからのメッセージ』(大修館書店)など多数。