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鉄鋼各社、CO2削減に本腰 新技術で環境負荷低減アピール

 鉄鋼大手が、二酸化炭素(CO2)排出削減に向け技術開発を加速している。JFEスチールは25日、排出したCO2を再利用できる新型高炉を開発すると発表。神戸製鋼所と日本製鉄も独自技術に磨きをかける。脱炭素が喫緊の課題となる中、新技術が環境負荷低減への積極姿勢をアピールする材料になるだけでなく、他社に対する強みにもなるとみて開発に本腰を入れる考えだ。

 製鉄所の基幹設備である高炉では、石炭を蒸し焼きにしたコークスを還元材に使い、鉄鉱石から酸素を取り除くことで銑鉄と呼ぶ溶けた鉄を作る。このためCO2排出削減は、コークスの使用量をいかに減らすかが最大の課題となる。

 JFEスチールは高炉から排出されたCO2をメタンに変換し、還元材に繰り返し使う「カーボンリサイクル高炉」を開発する。高炉単体で3割のCO2排出削減を実現したい考え。余ったCO2を化学品の原料に再利用するなどして、製鉄所の排出実質ゼロも目指す。東日本製鉄所千葉地区(千葉市)を候補に、2024年から小型高炉を使った実証実験を行い、30年代には実用化したい考えだ。

 同社は、低品位の鉄鉱石と石炭から作る触媒「フェロコークス」も開発中。高炉に投入すると、還元反応が速まってコークスの使用量が減り、CO2排出量を1割削減できる。30年までに、すでに保有する実証設備の規模を拡大した上で商業利用を始める考えだ。

 神戸製鋼所は2月、高炉のCO2排出を2割減らせる技術を確立した。天然ガスと反応させ、鉄鉱石から酸素を除いた「還元鉄」を大量投入することで、コークス使用量を減らす仕組み。コークスの量が減ると炉内の状態が不安定になるが、人工知能(AI)を使った緻密な操業管理などで解決した。顧客の要望次第で、1年以内に加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の高炉に技術導入できるという。

 鉄スクラップを電気の熱で溶かす電炉の導入も進む。電炉はCO2排出量が高炉の4分の1と少ない半面、生産性は低く、自動車用鋼板のような高級鋼材の生産も難しい。日本製鉄は高級鋼材にも対応した大型電炉を30年までに実用化する方針だ。

 鉄鋼各社は、ほかにも新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、コークスの一部を水素に置き換える「水素製鉄法」を開発中。その先には、水素のみを還元材に使う製鉄法も見据える。

 鉄鋼業界のCO2排出量は国内製造業の約4割を占めており、削減圧力は日増しに高まっている。一方、今後は環境負荷の少ない鋼材ほど高く売れる仕組みが普及する可能性があり、技術的優位を築くチャンスでもある。JFEスチールの北野嘉久社長は「CO2削減をリスクのみならず(ビジネス拡大の)機会ととらえ、持続可能な社会の実現に貢献する」と力を込める。(井田通人)(【脱炭素最前線】水素ガスタービンでCO2ゼロ 三菱重工、開発から実証まで高砂工場で一貫)

 ■鉄鋼業界における二酸化炭素(CO2)削減の主な技術開発

 ≪JFEスチール≫

 ・排出したCO2を再利用できる「カーボンリサイクル高炉」を2030年代に実用化

 ・低品位の鉄鉱石と石炭から作り、高炉のCO2排出を1割減らせる触媒「フェロコークス」を開発、30年までの商業利用開始を目指す

 ≪神戸製鋼所≫

 ・天然ガスと反応させて鉄鉱石から酸素を取り除いた「還元鉄」を使い、高炉のCO2排出量を2割削減できる技術を確立

 ≪日本製鉄≫

 ・30年までに高級鋼材も作れる大型電炉を実用化

 ≪各社≫

 ・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、コークスの一部を水素に置き換える「水素製鉄法」を開発