ワクチン接種の医師への質問 情報は客観視、最後は自分で決める
緊急事態宣言が沖縄を除いて解除された。しかし、五輪・パラリンピックを控え、早くも感染再拡大が懸念されている。新型コロナウイルスワクチン接種は進んでいるものの、欧米に比べてかなりの遅れである。急ピッチで進める方針に、各自治体は必死である。かかりつけの医療機関での接種を望む人も多く、大規模接種会場ではせっかく体制をとっても予約が少ないなどの問題も起こっている。(永井弥生)
職種による優先など工夫をして柔軟に対応し、若い人にも接種が進むのは望ましい方向である。大学でも始まった。接種時の問診票に、「現在、何らかの病気にかかって、治療(投薬など)を受けていますか」、さらに「その病気を診てもらっている医師に今日の予防接種を受けていいといわれましたか」という質問がある。
そのため、通院中の多くの患者は「受けていいですか」と主治医に尋ねることになる。それを尋ねる電話が病院にひっきりなしにかかり、尋ねるために予約を早める患者もいた。その後、2つ目の質問は削除された。
コロナワクチンの接種禁忌には(1)そのときに発熱がある(2)重篤な急性疾患にかかっている(3)ワクチンの成分に重度の過敏症をおこしたことがある(4)それ以外で予防接種を受けることが不適当と考える、などがある。(1)(2)は当然その日には受けられない。(3)も何に対するアレルギーかという問題はあるが、「重度」と判断するケースは限られる。(4)は微妙な表現だが、こんな疾患があるから、こんな薬を飲んでいるから「受けてはいけない」ということには、ほとんどの方が当てはまらない。
かかりつけ医と相談して慎重に判断を、というものも示されてはいても、「では受けるな」と言い切って受けないリスクをとらせるのも難しい。それぞれのケースにおいて、丁寧に話しながら考えて決めていくしかない。
「受けてもいいか」「自分は受けられるのか」と聞かれれば、「受けていけない理由はない」のであり、たいていはそう答えることになる。「受けて大丈夫か」という質問は「受けても何も起こらないのか、自分は安全か」ということであれば、それは絶対大丈夫かは分からない。そのリスクは特に病気のない方と同じか、もしかしたら少し高いのかもしれないが、測れるものではない。
それを承知で受け入れるかどうか決めるのである。世の中にはワクチンに懐疑的な意見を述べる人もいる。患者から、「受けた方がいいのでしょうか」と尋ねられることもある。大勢に従うのが全てではないかもしれないが、ワクチンは科学的根拠があり、多くの専門家が推奨しているものである。
メリットがデメリットを上回ると判断されるというのが、現時点での事実である。しかし、最後の決定は自分である。情報は、誰がどのように何を根拠にして伝えているのか、冷静に考えて自分の行動を決めるべきなのは、何事も同じである。
これからの時代、医療を賢く自分のために利用する「患者力」が必要だ。自分の人生に責任を持つ、医療はあなたが生きるお手伝いができるだけである。『これからの医療 5つの「患者力」があなたと医療を守る!』(ごま書房新社)を刊行した。患者力は人間力である。しなやかに自分らしい人生を生きるために必要な力を備え、医療を上手に活用してほしい。
【プロフィル】永井弥生(ながい・やよい) 医療コンフリクトマネージャー。医学博士/皮膚科専門医。山形大医卒。群馬大学病院勤務時の2014年、同病院の医療事故を指摘し、その後の対応に当たり医療改革を行う。群馬県出身。