みずほ銀行、相次いだシステム障害 脆弱性を直視しない体質が課題
みずほ銀行で相次いだシステム障害について、親会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は定時株主総会で「私の責任のもとに一致団結して対応する」と約束した。ただ、過去にもATMでキャッシュカードが取り込まれる同様の障害を起こしながら、抜本的対策を取らなかった経緯が今回明らかになっている。顧客目線の弱さは深刻で、信頼回復への道のりは平坦(へいたん)ではない。
株主総会では、昨年も質問に立ちシステム面の弱さを指摘したという男性株主が「1年経ってみると、人的手配が不足していたように報道されている」と、対策が講じられなかったことに不満をあらわにした。坂井氏は「指摘をたまわったにもかかわらず障害を起こしたことをおわびしたい」と陳謝。今後は現場、本部を問わず組織全体で障害対応力の向上を図る姿勢を強調した。
みずほの第三者委員会が今月まとめた報告書には、システム障害による通帳やカードの取り込みが2018年6月に1821件、19年12月に187件あったにも関わらず、「公表基準に達していない」として発表しなかった事実が盛り込まれた。
報告書はトラブルをATMの仕様変更につなげられなかった組織について、「顧客への影響に対する感度の低さが見て取れる」と指摘。再発防止策を講じていれば、今年2月28日の障害で起きた5000件超の取り込みのうち9割は防げたと推定する。
また、2月28日の障害では最初のエラーが発生してから25分後の午前10時15分には関連部署に一斉メールが送られたが、重大性の認識が甘く、「行外に軽微かつ限定的な影響を及ぼす障害」のレベルと判定された。このため情報共有の範囲が狭まり、藤原弘治頭取は午後1時半にネットニュースで事態を把握。本部が顧客対応のために営業店に出勤を指示したのは午後2時25分、具体的な対応策を明確に指示したのは午後5時半と後手に回った。
問題の本質は株主すら懸念を訴えたシステムの脆(ぜい)弱(じゃく)性から目を背け、課題解決を先送りし続けた組織体質にある。維持管理費がかさむATMは銀行にとって“金食い虫”で、利用客の利便性向上へ積極的に動く動機は薄かった。手数料収入が見込める富裕層向けサービスなどを優先し、「顔のみえない顧客」を軽視してこなかったか。再発防止には、過去の経営姿勢に対する真(しん)摯(し)な反省が不可欠だ。 (高久清史)