金融

国勢調査 人口減で労働力低下加速、人手不足が経済成長の重石に

 25日発表の国勢調査(速報値)は日本の総人口が平成27年の前回調査から2回連続で減少し、労働力の低下による経済成長の停滞が一層懸念される。国内総生産(GDP)は国民が生み出した付加価値の合計であり、人口減を補うには技術革新などによる生産性向上が避けて通れない。新型コロナウイルス禍の“後遺症”で人手不足は今後さらに悪化するとみられ、日本経済は正念場に立たされる。

 総人口は27年に国勢調査として初の減少を記録。経済の実力を示す「潜在成長率」(日本銀行調べ)も26年度前半(0・98%)を境に低下を始め、コロナ禍に見舞われた令和2年度後半は0・04%まで落ち込んだ。リーマン・ショックから立ち直りつつあった平成23年度前半と同水準だ。

 政府は女性や高齢者の就業を後押しして労働力を補ってきたものの、産業のIT化が遅れたことなどで生産性は伸びず低成長から抜け出せない。人口が減れば消費も抑制され、需要が低迷すれば物価が持続的に下落するデフレが定着する。

 一方、足元ではワクチン接種で景気の先行きに光が差してきたが、今度はコロナ禍による経済構造の変化が人手不足を加速する。

 日本総研の西岡慎一上席主任研究員によると、休業が相次いだ飲食店など対面型サービス業では従業員が小売業などに転職する動きが進んだ。感染収束後は“リベンジ消費”で急速な需要回復が予想されるにもかかわらず、事業継続で精いっぱいのサービス業には賃上げの余力が乏しく、「急激な需要増加に対応できる人手の確保が難しい」。借金を抱えた企業は省力化の設備投資も難しく、人手不足がさらに深刻化しそうだ。

 人手不足に直面した企業は以前から、賃上げで新たな労働者を採用するより営業日短縮など生産抑制で対応する傾向が強い。西岡氏は前回の景気回復局面(24年11月~30年10月)並みの人手不足が起きれば成長率を年率1%押し下げると試算する。コロナ後の景気回復を着実に進めるため、政府は労働力の供給拡大策を継続しながら、IT化や設備投資の促進など生産性向上に尽力する必要がある。

(田辺裕晶)